FRB、24年は名目で利下げも実質で利上げ

20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、ニューヨークの株式市場と外国為替市場が特に注目したことは、名目政策金利ベースで、2024年の利下げ回数予測が4回から2回に減ったことだ。その切り下げ幅は合計0.5%程度となる。これが、市場にずっしり応えたのは、名目では利下げでも、実質政策金利ベースでは利上げになることだ。インフレは減速を見込むのに、名目政策金利は「より高く、より長く」の米連邦準備理事会(FRB)の基本方針は変わらない。名目金利を5%以上の水準に、出来るだけ長く、場合によっては24年後半まで留め置く方針だ。ぶり返しやすいインフレを根絶やしにするという強い意志が感じられる。それゆえ、利下げへの転換に関しては、極めて慎重な姿勢だ。さらに、具体的な数値で検証すると、FRBが最も重視する「コアPCEインフレ率」は、23年は3.7%、24年は2.6%。しかるに、FOMC参加者の金利予測では、24年末の名目政策金利の中心値は、4.875%から5.125%の中間にある。その結果、名目政策金利からインフレ率を除いた実質政策金利は、23年より24年のほうが高いことになる。インフレは順調に減速を予測しても、実質政策金利は利上げとなるわけだ。FRBの視点では、利下げに転換しても、その後、インフレが再燃することが、最悪のシナリオだ。それゆえ、予想インフレ率に低下が見込まれても、実質政策金利はプラス圏に留め置き、景気抑制的な「保険」をかける政策意図なのだ。会合後の記者会見でも、FRBのパウエル議長は、米経済紙記者に「議長とNY連銀のウィリアムズ総裁(副議長格)はかねて、実質政策金利を重視してきたが」と話題を向けられると、「実質政策金利を景気抑制的な水準に維持することが重要だと理解している」と答えていた。これは、実質政策金利をプラス圏に置くことを意味している。市況の経験則として、プラスの実質政策金利は、株式市場に逆風となり、外為市場ではドル高(円安)加速要因となる。日本側が気になる円相場は、20日の欧州時間寄り付きにかけて、1ドル=148円を突破した後に、147円台後半まで戻していたが、パウエル議長の記者会見中に148円20銭水準まで再度円安が進行するに至った。欧州時間での148円突破については、20日付本欄を参照されたい。【参考記事】円安進行、148円台に 日銀・植田氏の新聞発言が裏

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FRB、24年は名目で利下げも実質で利上げ

20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、ニューヨークの株式市場と外国為替市場が特に注目したことは、名目政策金利ベースで、2024年の利下げ回数予測が4回から2回に減ったことだ。その切り下げ幅は合計0.5%程度となる。これが、市場にずっしり応えたのは、名目では利下げでも、実質政策金利ベースでは利上げになることだ。

インフレは減速を見込むのに、名目政策金利は「より高く、より長く」の米連邦準備理事会(FRB)の基本方針は変わらない。名目金利を5%以上の水準に、出来るだけ長く、場合によっては24年後半まで留め置く方針だ。ぶり返しやすいインフレを根絶やしにするという強い意志が感じられる。それゆえ、利下げへの転換に関しては、極めて慎重な姿勢だ。

さらに、具体的な数値で検証すると、FRBが最も重視する「コアPCEインフレ率」は、23年は3.7%、24年は2.6%。しかるに、FOMC参加者の金利予測では、24年末の名目政策金利の中心値は、4.875%から5.125%の中間にある。その結果、名目政策金利からインフレ率を除いた実質政策金利は、23年より24年のほうが高いことになる。インフレは順調に減速を予測しても、実質政策金利は利上げとなるわけだ。

FRBの視点では、利下げに転換しても、その後、インフレが再燃することが、最悪のシナリオだ。それゆえ、予想インフレ率に低下が見込まれても、実質政策金利はプラス圏に留め置き、景気抑制的な「保険」をかける政策意図なのだ。

会合後の記者会見でも、FRBのパウエル議長は、米経済紙記者に「議長とNY連銀のウィリアムズ総裁(副議長格)はかねて、実質政策金利を重視してきたが」と話題を向けられると、「実質政策金利を景気抑制的な水準に維持することが重要だと理解している」と答えていた。これは、実質政策金利をプラス圏に置くことを意味している。

市況の経験則として、プラスの実質政策金利は、株式市場に逆風となり、外為市場ではドル高(円安)加速要因となる。

日本側が気になる円相場は、20日の欧州時間寄り付きにかけて、1ドル=148円を突破した後に、147円台後半まで戻していたが、パウエル議長の記者会見中に148円20銭水準まで再度円安が進行するに至った。

欧州時間での148円突破については、20日付本欄を参照されたい。

最近のNY市場では、ドル高の話題になると、円安の動きが目立つので、引き合いに出されることが多い。そもそもドル高をNY株式市場は素直に歓迎できないので、日銀総裁の記者会見への注目度も高い。国際通貨投機筋もしきりにチェックを入れてくるので要注意だ。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
YouTube豊島逸夫チャンネル
・業務窓口は[email protected]

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