原発処理水、8月放出へ条件整う 7日に設備合格認定

東京電力福島第1原子力発電所敷地内に並ぶ処理水の貯蔵タンク(6月17日)東京電力福島第1原子力発電所から出る処理水について、海洋放出に必要な条件が週内に整う見通しになった。4日に国際原子力機関(IAEA)は放出の安全性を認め、7日には日本政府の安全性の評価作業も完了する。政府は8月にも放出する調整に入る構えで地元への説明を続ける。【関連記事】[社説]処理水放出へIAEAの支援をいかせ原子力規制委員会は5日、処理水を放出する設備の使用前検査について「合格」に相当する終了証を7日に東電に交付する方針を示した。山中伸介委員長は記者会見で「特段大きな問題はないと評価できた」と述べた。IAEAは4日の報告書で「処理水の放出が人と環境に及ぼす放射線の影響は無視できる程度」として海洋放出の計画が「国際的な安全基準に合致する」と結論付けた。放出前に必要な設備面の手続きにめどが立ち、IAEAという国際機関の「後方支援」も得た。福島第1原発を訪れたグロッシ事務局長は5日「日本政府の決定を受けて速やかに放出できる」と表明。政府はIAEAと協力して地元自治体や近隣国の理解獲得へラストスパートをかける。経済産業省は5日、処理水の海洋放出を巡り福島県内で地元関係者との意見交換会を開いた。IAEAも参加し、原発内に現地事務所を設けて放出前後の数週間は担当者が常駐することや、透明性の高い情報発信をすることなどを説明した。処理水を放出すれば風評被害が広がるとの不安が漁業関係者には根強い。福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長は5日「我々が反対している中で放出計画が進んでいるという緊張感を持ってほしい」と、改めて政府に慎重な対応を求めた。トリチウムを含む処理水をためるタンクは原発敷地内で増え続けており、廃炉作業の障害になりかねない。処理水放出は避けられない決断だ。一方で政府と東電は15年、福島県漁連に「関係者の理解なくしていかなる処分もしない」と約束した。政府高官は「漁業組合をはじめとする地元の理解が必要だ」と現在も順守する姿勢を保つ。具体的な放出時期の調整には地元自治体の政治日程も絡む。東北3県では岩手県知事が9月に任期満了を迎え、同月には岩手、10月に宮城、11月は福島で県議選が控える。争点化を避けるため選挙前に放出するのが望ましいとの見方もある。松野博一官房長官は5日の記者会見で、海洋放出の時期に

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原発処理水、8月放出へ条件整う 7日に設備合格認定

東京電力福島第1原子力発電所から出る処理水について、海洋放出に必要な条件が週内に整う見通しになった。4日に国際原子力機関(IAEA)は放出の安全性を認め、7日には日本政府の安全性の評価作業も完了する。政府は8月にも放出する調整に入る構えで地元への説明を続ける。

原子力規制委員会は5日、処理水を放出する設備の使用前検査について「合格」に相当する終了証を7日に東電に交付する方針を示した。山中伸介委員長は記者会見で「特段大きな問題はないと評価できた」と述べた。

IAEAは4日の報告書で「処理水の放出が人と環境に及ぼす放射線の影響は無視できる程度」として海洋放出の計画が「国際的な安全基準に合致する」と結論付けた。

放出前に必要な設備面の手続きにめどが立ち、IAEAという国際機関の「後方支援」も得た。福島第1原発を訪れたグロッシ事務局長は5日「日本政府の決定を受けて速やかに放出できる」と表明。政府はIAEAと協力して地元自治体や近隣国の理解獲得へラストスパートをかける。

経済産業省は5日、処理水の海洋放出を巡り福島県内で地元関係者との意見交換会を開いた。IAEAも参加し、原発内に現地事務所を設けて放出前後の数週間は担当者が常駐することや、透明性の高い情報発信をすることなどを説明した。

処理水を放出すれば風評被害が広がるとの不安が漁業関係者には根強い。福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長は5日「我々が反対している中で放出計画が進んでいるという緊張感を持ってほしい」と、改めて政府に慎重な対応を求めた。

トリチウムを含む処理水をためるタンクは原発敷地内で増え続けており、廃炉作業の障害になりかねない。処理水放出は避けられない決断だ。

一方で政府と東電は15年、福島県漁連に「関係者の理解なくしていかなる処分もしない」と約束した。政府高官は「漁業組合をはじめとする地元の理解が必要だ」と現在も順守する姿勢を保つ。

具体的な放出時期の調整には地元自治体の政治日程も絡む。東北3県では岩手県知事が9月に任期満了を迎え、同月には岩手、10月に宮城、11月は福島で県議選が控える。争点化を避けるため選挙前に放出するのが望ましいとの見方もある。

松野博一官房長官は5日の記者会見で、海洋放出の時期について春から夏ごろを見込む方針に変更はないと言明した。

近隣国にも懸念が残る。グロッシ氏は7日以降に韓国、ニュージーランド、クック諸島の3カ国も訪問して報告書の内容などを説明する予定だ。韓国政府は5日「IAEAの発表を尊重する」とする立場を示した。

中国外務省の汪文斌副報道局長は5日の記者会見で「国民の健康と食品安全を確保するため、海洋環境の監視や輸入水産品などの検査を強化する」と明らかにした。中国は放出に反対するが、グロッシ氏は「IAEAにとって中国も非常に重要なパートナーだ。懸念が表明されれば真摯に対応する」と語った。

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