[社会] 葛飾「呑んべ横丁」、惜しまれつつ姿消す…「立石のスーザン・ボイル」ら冊子で後世に

 千円札1枚で気軽に酔える「せんべろの街」として知られた東京都葛飾区立石の京成立石駅前で、今月から再開発工事が始まった。昭和の香りを色濃く残していた北口の「 呑(の) んべ横丁」に並んだ店は、先月末に全て閉店。一帯は5年後、区役所新庁舎などを備えた新たな街に生まれ変わる予定だが、約70年にわたって地域から愛された古き良き酒場との別れを惜しむ声は多い。(増田知基) 看板とお別れ 「あ~……さみしいなあ」。5日午後、「呑んべ横丁 アサヒビール」と書かれた入り口の看板を作業員が取り外しにかかると、それを見ていた地元男性が涙を浮かべてつぶやいた。木枠から外される「呑んべ横丁」の看板(5日午後、葛飾区で) 付近は迷路のように狭い路地が入り組み、両脇には古い木造長屋の店舗が立ち並ぶ。天井はアーケード風のトタン屋根で、トイレは共同だ。男性は、「汚くても、ずっとここで飲んできた。夜を照らす看板が見られなくなるなんて信じられないよ」と肩を落とした。  横丁の原型は、1954年にできた「立石デパート」。創業当時は洋服店やカバン店、すし店など40店舗余りがひしめき、狭い店舗の上は住居として使われた。高度経済成長の中で、近くの工場の従業員らが飲食する場所が必要になり、次第に盛り場となっていった。 横丁の土地を所有している立石駅北口地区市街地再開発組合の徳田昌久理事長(87)は、「昭和のノスタルジックな雰囲気をかみしめることができる都内でも数少ない場所だった」と惜しむ。移転営業は数店 惜別の思いは、店も同じだ。 8月19日に約40年の歴史を閉じた横丁の老舗小料理屋「しらかわ」。1人で切り盛りしてきた店主の玉井征子さん(80)は「なじみのお客さんと会えなくなり、張り合いがない」としんみりと語った。 1 2

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[社会] 葛飾「呑んべ横丁」、惜しまれつつ姿消す…「立石のスーザン・ボイル」ら冊子で後世に

 千円札1枚で気軽に酔える「せんべろの街」として知られた東京都葛飾区立石の京成立石駅前で、今月から再開発工事が始まった。昭和の香りを色濃く残していた北口の「 んべ横丁」に並んだ店は、先月末に全て閉店。一帯は5年後、区役所新庁舎などを備えた新たな街に生まれ変わる予定だが、約70年にわたって地域から愛された古き良き酒場との別れを惜しむ声は多い。(増田知基)

看板とお別れ

 「あ~……さみしいなあ」。5日午後、「呑んべ横丁 アサヒビール」と書かれた入り口の看板を作業員が取り外しにかかると、それを見ていた地元男性が涙を浮かべてつぶやいた。

木枠から外される「呑んべ横丁」の看板(5日午後、葛飾区で)
木枠から外される「呑んべ横丁」の看板(5日午後、葛飾区で)

 付近は迷路のように狭い路地が入り組み、両脇には古い木造長屋の店舗が立ち並ぶ。天井はアーケード風のトタン屋根で、トイレは共同だ。男性は、「汚くても、ずっとここで飲んできた。夜を照らす看板が見られなくなるなんて信じられないよ」と肩を落とした。

 横丁の原型は、1954年にできた「立石デパート」。創業当時は洋服店やカバン店、すし店など40店舗余りがひしめき、狭い店舗の上は住居として使われた。高度経済成長の中で、近くの工場の従業員らが飲食する場所が必要になり、次第に盛り場となっていった。

 横丁の土地を所有している立石駅北口地区市街地再開発組合の徳田昌久理事長(87)は、「昭和のノスタルジックな雰囲気をかみしめることができる都内でも数少ない場所だった」と惜しむ。

移転営業は数店

 惜別の思いは、店も同じだ。

 8月19日に約40年の歴史を閉じた横丁の老舗小料理屋「しらかわ」。1人で切り盛りしてきた店主の玉井征子さん(80)は「なじみのお客さんと会えなくなり、張り合いがない」としんみりと語った。

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