エーザイの認知症薬、進行7カ月半遅く 普及へ半歩

レカネマブの米国での正式承認について記者会見するエーザイの内藤CEO(7日、東京都文京区)エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が普及期に入った。症状の進行を7カ月半遅らせる効果があり、2030年には世界で250万人が投与対象となる見通しだ。投与前の事前検査は患者の負担が重く、実施場所が限られる。専門医不足という課題もある。【関連記事】認知症薬普及、専門医不足が重荷 米でエーザイ新薬承認内藤晴夫最高経営責任者(CEO)は7日の記者会見で米国でのレカネマブの正式承認について「アルツハイマー病の本格的治療に向けて新たな一歩を踏み出すことができる」と話した。アルツハイマー病患者の脳内には「アミロイドベータ」というたんぱく質が長い年月をかけて蓄積していくことが知られている。一定以上、蓄積すると神経細胞が徐々に破壊され、認知機能に異常が起きる。レカネマブはアミロイドを除去するように設計された医薬品で、症状の進行スピードを27%緩やかにする効果が臨床試験(治験)で確認された。推計では症状の進行を7カ月半遅らせる効果を見込んでいる。2週間に1度、点滴で1時間程度かけて投与する。根治につながる薬ではない。対象は物忘れなど症状が軽微な早期の患者だ。住所や電話番号などが思い出せないといった日常生活に支障がでている患者には使用できない。内藤CEOは「早期患者の1〜2%がまず投与の対象となる」と説明した。レカネマブは30年度に世界で1兆円の売上高を見込む。普及には課題がある。一つが検査体制だ。レカネマブを投与するためには事前に陽電子放出断層撮影(PET)か脳脊髄液(CSF)の検査で、脳内にアミロイドの蓄積があるかどうかを調べる必要がある。日本ではアミロイドの蓄積を調べるPET検査に対応可能な施設は全国で50カ所程度に限られる。現時点では医療保険の適用外のため、自己負担の場合は1回数十万円かかる。また副作用も報告されている。治験では緊急的な処置が必要として投与が中止になった参加者が出た。脳出血や脳の腫れを引き起こす可能性があり注意が必要だ。エーザイは1982年に筑波研究所(茨城県つくば市)を開設して以降、約40年間にわたりアルツハイマー病治療薬の開発に取り組んできた。海外の製薬大手も認知症薬の開発を進めてきたが、いずれも失敗が続いた。エーザイは経営資源を集中し

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エーザイの認知症薬、進行7カ月半遅く 普及へ半歩

エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が普及期に入った。症状の進行を7カ月半遅らせる効果があり、2030年には世界で250万人が投与対象となる見通しだ。投与前の事前検査は患者の負担が重く、実施場所が限られる。専門医不足という課題もある。

内藤晴夫最高経営責任者(CEO)は7日の記者会見で米国でのレカネマブの正式承認について「アルツハイマー病の本格的治療に向けて新たな一歩を踏み出すことができる」と話した。

アルツハイマー病患者の脳内には「アミロイドベータ」というたんぱく質が長い年月をかけて蓄積していくことが知られている。一定以上、蓄積すると神経細胞が徐々に破壊され、認知機能に異常が起きる。

レカネマブはアミロイドを除去するように設計された医薬品で、症状の進行スピードを27%緩やかにする効果が臨床試験(治験)で確認された。推計では症状の進行を7カ月半遅らせる効果を見込んでいる。2週間に1度、点滴で1時間程度かけて投与する。根治につながる薬ではない。

対象は物忘れなど症状が軽微な早期の患者だ。住所や電話番号などが思い出せないといった日常生活に支障がでている患者には使用できない。内藤CEOは「早期患者の1〜2%がまず投与の対象となる」と説明した。レカネマブは30年度に世界で1兆円の売上高を見込む。

普及には課題がある。一つが検査体制だ。レカネマブを投与するためには事前に陽電子放出断層撮影(PET)か脳脊髄液(CSF)の検査で、脳内にアミロイドの蓄積があるかどうかを調べる必要がある。

日本ではアミロイドの蓄積を調べるPET検査に対応可能な施設は全国で50カ所程度に限られる。現時点では医療保険の適用外のため、自己負担の場合は1回数十万円かかる。

また副作用も報告されている。治験では緊急的な処置が必要として投与が中止になった参加者が出た。脳出血や脳の腫れを引き起こす可能性があり注意が必要だ。

エーザイは1982年に筑波研究所(茨城県つくば市)を開設して以降、約40年間にわたりアルツハイマー病治療薬の開発に取り組んできた。海外の製薬大手も認知症薬の開発を進めてきたが、いずれも失敗が続いた。エーザイは経営資源を集中し、巨額なコストがかかる実用化研究では米バイオジェンと連携し、実現にこぎつけた。

最大のライバルは米イーライ・リリーだ。同社が開発する「ドナネマブ」はレカネマブと同じくアミロイドに結合するバイオ医薬品で、認知症の進行スピードを35%低下させるという治験の結果を公表している。脳出血や脳の腫れといった副作用はレカネマブより高い確率で発生しているが、有効性はレカネマブを大きく上回っている。

世界ではアルツハイマー病の治療薬の治験が140以上進行中で、うち半数以上が新薬としての承認を前提とした製薬会社による治験だ。アミロイドとは別のたんぱく質「タウ」を標的とした治療薬の開発も進んでいる。エーザイとバイオジェンのほか、イーライ・リリー、スイスのロシュといった製薬大手が手掛けている。

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