[コラム] 猫あるある〈上〉――ハニーはナムロックキーを踏む

　猫のしぐさや習性について見聞きしたとき、「あるある！」と相づちを打つことがよくあります。猫を飼っている人ならば似た経験をしていることでしょう。「猫あるある」は、「微妙に違う」「こんなこともする」といった、うちの子あるあるもたいてい存在します。私が飼うノネコのハニーのあるあるをいくつか挙げてみます。

ハニーの大好物の一つ

　コロナ禍で一般化したリモートワーク。オンライン会議中に、猫が画面を横切ったり、「にゃーん」と鳴いた声をマイクが拾ったりなど珍事件の発生をそこかしこで見聞きしました。

　これらの猫の行動は、飼い主にかまってもらいたいアピールですが、飼い主の側からすると、頼むからあっちに行って！という気持ちになるものです。たとえばですが、会社の不祥事の対策を議論している最中、猫があくびをしながら画面を横切りでもしたら、画面が一瞬でフリーズするような沈黙が、オンラインを通じて流れることでしょう。

　こうした猫の困った行動の一つに、パソコンのキーボードを踏んで歩く、というものがあります。猫飼いの人ならほぼ例外なく、経験しているのではないでしょうか。猫からすれば、飼い主とパソコンの画面の間に割って入り、自分の存在を見せつけているわけです。

　ハニーもノネコとはいえ猫ですから、パソコンのキーボードを踏んづけていくのは大好物の一つです。私がこの機会に書きたいことは、ハニーがキーボードを横断すると、ナムロック（スクロールロック）になる確率が、異様に高いという切実な問題です。

　ナムロックはご存じの通り、テンキー（１０キー）の機能を使うためのキーです。テンキーは数字の入力に特化したキーで、パソコンのキーボードでは右側に並んでおり、ノートパソコンの場合は、ナムロックキーを押すことでテンキーに切り替えることができるのです。

　ただ、ナムロックキーを本来の目的で押す人は多くないでしょう。誤って押してしまい、イラッとさせられることのほうが圧倒的多数に相違ありません。

「高床式」で撃退

　ナムロックの状態で、たとえば「ハニーはノネコです」と打つと「はん５－はん６ね２６でｓ４」と、わけのわからない文字が並びます。ナムロックになっていることに気づかず、文字を打って、なんじゃこりゃと思ったことは、一度や二度ではありません。おまけにナムロックの解除方法を忘れており（これは私の記憶力の問題か……）、解除が一発でできないこともしばしばで、ため息をつかされます。まさかハニーが意識的に、ナムロックのキーをピンポイントでえいっと押しているとは思いませんが（そうだったら怖い……）。

　ハニーのたちが悪いところは、キーボードの横断を阻止するため、こちらが手でハニーを押し返すと、とたんに悪い目つきの猫になって、やんのか！と昭和時代のスケバンのようなメンチを切ることです。こちらの平和主義を見透かしたような、横暴な態度にはあきれます。

　もっともつい最近、キーボード横断ができなくなるように、ノートパソコンを斜めに設置する台を買いました。本来、人の目や姿勢を楽にするのが目的の台ですが、わが家では害獣の侵入を防ぐ弥生時代の高床式住居のように、ハニーの横暴に抑止力を発揮しています。なすすべなく右往左往、はたまた意気消沈するハニーの背中は写真でとくとご覧ください。