[サブカル] 郷土愛をくすぐる自虐的「埼玉あるある」、漫画「マイホームアフロ田中」浦和を舞台に最新作

 若い夫婦が娘の教育環境を考え、浦和で家を探す――。その悲喜こもごもと住宅事情をリアルに描写したギャグ漫画がある。週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載中の「マイホームアフロ田中」。作者ののりつけ雅春さん(43)は旧騎西町(埼玉県加須市)出身で、現在も県内在住だ。のりつけさんが描く物語や主人公が口にするセリフは、埼玉の庶民のちょっと自虐的な郷土愛をくすぐる。(児玉森生)住宅探しで苦悩する田中(下)と妻の奈々子(作品から)(c)のりつけ雅春/小学館 「アフロ田中」は連載20年以上、単行本は累計700万部近くを発行する人気シリーズだ。アフロヘアの主人公・田中広の高校時代から現在の「マイホーム」まで7作がある。就職や結婚といった転機で悩んだり、前向きになったり。ちょっとダメな男の日常を描く。  「マイホーム」は9月28日に第3巻が発売された。東京都内の賃貸マンションの契約更新を控え、建設作業員として働く35歳の田中と妻の奈々子、小学校入学前の長女の3人家族が夢の我が家を探す物語だ。娘を「文教都市」の学校に通わせたいという奈々子の意見で、舞台が浦和になった。 のりつけさんにとって、浦和は「遊びに行っていた大宮の隣」という程度の認識だったが、数年前、美術館や公園が多い街だと知った。自身の周りにいる教育熱心な母親たちの姿を見ていると、浦和には「理想の学習環境」があると映った。作中では田中が「文化レベルが……」と、その高さに驚く。 シリーズで登場する県内の土地の描写は、多くの県民が「あるある」と思うものだろう。決してメジャーではない花火大会で特大の4尺玉が打ち上げられる。田んぼの真ん中になぜか成人向けビデオの自動販売機がある。上京した若者が「その距離の近さゆえになかなか帰郷しない」というエピソードもわかる。 最新作が焦点を当てているのは住宅事情だ。地価の上昇が続き、浦和ではマンションも戸建ても、ファミリー向け物件は5000万円を下らない。のりつけさんは不動産店に足を運び、物件も見て回った。住宅価格の相場はおおむね理解できたといい、その感想を田中に「恐ろしい」と代弁させている。 漫画家として成功しているのりつけさんだが、「欲はない」と言う。田中も特別な人生は送っていない。作品の魅力は、多くの読者にとって登場人物が「等身大」に映ることだろう。 最新巻でも田中はまだ新居を購入

A person who loves writing, loves novels, and loves life.Seeking objective truth, hoping for world peace, and wishing for a world without wars.
[サブカル] 郷土愛をくすぐる自虐的「埼玉あるある」、漫画「マイホームアフロ田中」浦和を舞台に最新作

 若い夫婦が娘の教育環境を考え、浦和で家を探す――。その悲喜こもごもと住宅事情をリアルに描写したギャグ漫画がある。週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載中の「マイホームアフロ田中」。作者ののりつけ雅春さん(43)は旧騎西町(埼玉県加須市)出身で、現在も県内在住だ。のりつけさんが描く物語や主人公が口にするセリフは、埼玉の庶民のちょっと自虐的な郷土愛をくすぐる。(児玉森生)

住宅探しで苦悩する田中(下)と妻の奈々子(作品から)(c)のりつけ雅春/小学館
住宅探しで苦悩する田中(下)と妻の奈々子(作品から)(c)のりつけ雅春/小学館

 「アフロ田中」は連載20年以上、単行本は累計700万部近くを発行する人気シリーズだ。アフロヘアの主人公・田中広の高校時代から現在の「マイホーム」まで7作がある。就職や結婚といった転機で悩んだり、前向きになったり。ちょっとダメな男の日常を描く。

 「マイホーム」は9月28日に第3巻が発売された。東京都内の賃貸マンションの契約更新を控え、建設作業員として働く35歳の田中と妻の奈々子、小学校入学前の長女の3人家族が夢の我が家を探す物語だ。娘を「文教都市」の学校に通わせたいという奈々子の意見で、舞台が浦和になった。

 のりつけさんにとって、浦和は「遊びに行っていた大宮の隣」という程度の認識だったが、数年前、美術館や公園が多い街だと知った。自身の周りにいる教育熱心な母親たちの姿を見ていると、浦和には「理想の学習環境」があると映った。作中では田中が「文化レベルが……」と、その高さに驚く。

 シリーズで登場する県内の土地の描写は、多くの県民が「あるある」と思うものだろう。決してメジャーではない花火大会で特大の4尺玉が打ち上げられる。田んぼの真ん中になぜか成人向けビデオの自動販売機がある。上京した若者が「その距離の近さゆえになかなか帰郷しない」というエピソードもわかる。

 最新作が焦点を当てているのは住宅事情だ。地価の上昇が続き、浦和ではマンションも戸建ても、ファミリー向け物件は5000万円を下らない。のりつけさんは不動産店に足を運び、物件も見て回った。住宅価格の相場はおおむね理解できたといい、その感想を田中に「恐ろしい」と代弁させている。

 漫画家として成功しているのりつけさんだが、「欲はない」と言う。田中も特別な人生は送っていない。作品の魅力は、多くの読者にとって登場人物が「等身大」に映ることだろう。

 最新巻でも田中はまだ新居を購入できていない。浦和でのマイホーム探しの行く末はどうなるのか。のりつけさんはニヤリとして、「いい中古物件があれば、田中も夢がかなうかも。浦和で良い情報があったら教えてほしい」と話す。

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