[旅] 後楽園ホール(東京都文京区)…「闘い」の歴史刻む聖地

 東京ドームの隣に位置する後楽園ホールは1962年の開場から60年以上にわたり、ボクシングやプロレスなど、数々の名勝負が繰り広げられた「聖地」だ。 西郊ロッヂング(東京都杉並区)…文化財の賃貸アパート 通路の壁にはボクシングの歴代世界チャンピオンの名が記されたプレートが並ぶ  エレベーターを5階で降り、入り口を抜けるとボクシングのグラブが目に飛び込んできた。WBA世界フライ級王座を5度防衛し、在位中に交通事故で亡くなった“永遠のチャンプ”大場政夫(1949~73年)が使ったものだ。通路には歴代の日本人世界チャンピオンの名が刻印されたプレート、王座のベルトも展示されている。ホールが所有するゴング 歴史をかみしめながら、ホール内に入る。約1600人収容の観客席。その中央に、青いリングがスポットライトに照らされ鎮座している。闘いの場であるという現実が、強烈に迫ってきた。このリングではファイティング原田、輪島功一、具志堅用高といったレジェンドが試合をしている。世界タイトルマッチも催され、ファンを熱狂させた。 プロレスファンにとっても、後楽園ホールは特別な場所だ。有名な長州力の「かませ犬発言」(82年)や前田日明による第2次UWFの旗揚げ(88年)など、歴史的瞬間の舞台となった。運営する東京ドームのホール部、森下直美さんは「観客の数だけ思い出の試合があるはず」と言う。遠い席でもリングから約20メートル。迫力ある観戦を楽しめる引退に際し、ホールで矢尾板貞雄とスパーリングするファイティング原田(右・1970年) ホールは今も歴史を作り続けている。昨年行われた格闘技の興行は397件と、1日1件を超えるペースだった。ボクシングのプロテストや新人の4回戦も行われている。「新人にとっては夢の舞台で、ベテランにとっては慣れ親しんだリング」と森下さん。 新型コロナウイルス感染が拡大した時期には無観客興行も行われた。応援は拍手などに限られたが、政府の行動制限緩和に伴ってホールに歓声が戻ってきた。多くの夢と挫折と栄光が染みこんだリングから、今後、どんなスターが飛び立っていくのだろう。(文・長谷裕太 写真・佐藤俊和)住所  東京都文京区後楽1の3の61 アクセス  JR中央線の水道橋駅から徒歩3分。東京メトロ丸ノ内線の後楽園駅から徒歩5分 メモ  ホールは格

A person who loves writing, loves novels, and loves life.Seeking objective truth, hoping for world peace, and wishing for a world without wars.
[旅] 後楽園ホール(東京都文京区)…「闘い」の歴史刻む聖地

 東京ドームの隣に位置する後楽園ホールは1962年の開場から60年以上にわたり、ボクシングやプロレスなど、数々の名勝負が繰り広げられた「聖地」だ。

西郊ロッヂング(東京都杉並区)…文化財の賃貸アパート
通路の壁にはボクシングの歴代世界チャンピオンの名が記されたプレートが並ぶ
通路の壁にはボクシングの歴代世界チャンピオンの名が記されたプレートが並ぶ

 エレベーターを5階で降り、入り口を抜けるとボクシングのグラブが目に飛び込んできた。WBA世界フライ級王座を5度防衛し、在位中に交通事故で亡くなった“永遠のチャンプ”大場政夫(1949~73年)が使ったものだ。通路には歴代の日本人世界チャンピオンの名が刻印されたプレート、王座のベルトも展示されている。

ホールが所有するゴング
ホールが所有するゴング

 歴史をかみしめながら、ホール内に入る。約1600人収容の観客席。その中央に、青いリングがスポットライトに照らされ鎮座している。闘いの場であるという現実が、強烈に迫ってきた。このリングではファイティング原田、輪島功一、具志堅用高といったレジェンドが試合をしている。世界タイトルマッチも催され、ファンを熱狂させた。

 プロレスファンにとっても、後楽園ホールは特別な場所だ。有名な長州力の「かませ犬発言」(82年)や前田日明による第2次UWFの旗揚げ(88年)など、歴史的瞬間の舞台となった。運営する東京ドームのホール部、森下直美さんは「観客の数だけ思い出の試合があるはず」と言う。

遠い席でもリングから約20メートル。迫力ある観戦を楽しめる
遠い席でもリングから約20メートル。迫力ある観戦を楽しめる
引退に際し、ホールで矢尾板貞雄とスパーリングするファイティング原田(右・1970年)
引退に際し、ホールで矢尾板貞雄とスパーリングするファイティング原田(右・1970年)

 ホールは今も歴史を作り続けている。昨年行われた格闘技の興行は397件と、1日1件を超えるペースだった。ボクシングのプロテストや新人の4回戦も行われている。「新人にとっては夢の舞台で、ベテランにとっては慣れ親しんだリング」と森下さん。

 新型コロナウイルス感染が拡大した時期には無観客興行も行われた。応援は拍手などに限られたが、政府の行動制限緩和に伴ってホールに歓声が戻ってきた。多くの夢と挫折と栄光が染みこんだリングから、今後、どんなスターが飛び立っていくのだろう。(文・長谷裕太 写真・佐藤俊和)

住所  東京都文京区後楽1の3の61

アクセス  JR中央線の水道橋駅から徒歩3分。東京メトロ丸ノ内線の後楽園駅から徒歩5分

メモ  ホールは格闘技以外にも、人気演芸番組「笑点」の収録やファッションショーなどに使われている

記者のお気に入り…スポーツと縁深い老舗

 後楽園ホールと同じビルの2階に中国料理「後楽園飯店」がある。ホールと同じく1962年に開業。かつて世界タイトルマッチの調印式が行われ、プロ野球に関わる会合に利用されるなどスポーツにゆかりの深い老舗だ。

 本格的なコース料理がある店だが、平日ランチタイムならセットメニュー(サービス料・税込み1700円~)を頼め、チャーシュー入り汁そば(同1700円)、五目あんかけご飯(同2200円)など単品も楽しめる。飯店名物フカヒレの姿煮入り汁そばは、ファンの間で巨人の長嶋茂雄終身名誉監督も好んだ味として人気で、4300円という値段ながら多くの注文があるそうだ。稲飯龍典料理長=写真=は「この味だけは変えられない」と話す。(長)

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