[社会] アルゴリズムは「無罪」か…有害投稿対策は二の次、元ＦＢ社員「健全化より利益」内部告発

［情報偏食］第４部　混沌もたらす者たち＜５＞最終回　利用者の好みに合う情報をスマホに表示させるアルゴリズム（計算方法）は、似たような考えに包まれる「フィルターバブル」を生み、社会の分断を広げる――。７月２７日、デジタル空間のこうした「通説」を覆す可能性がある論文が発表された。 「リアル」と違わぬＡＩ製「フェイク」…「やらせ口コミ」・子どもの性的画像も作成 英ケンブリッジ大の「偽情報サミット」で講演するハウゲン氏＝尾関航也撮影　＜ＳＮＳで、自分と違う意見に接する機会が増えても、政治的な主張はほとんど変わらない＞ 　論文は、フェイスブック（ＦＢ）を運営する米メタが資金を投じ、外部の研究者が調べたものだ。２０２０年米大統領選前後の同年９～１２月、ＦＢとインスタグラムの利用者計約４万人に調査を実施。その間、対象者のアルゴリズムを停止し、好みの情報ばかりを表示させないようにした。　その結果、ユーザーの利用時間は大幅に減少。多くの利用者を引き留め、広告収入を増やすビジネスモデルにアルゴリズムが大きく関わっていることを裏付けた形となった。　一方で、ユーザーの政治的主張には大きな変化はなかったと結論づけた。この論文の解釈を巡って、メタと執筆した研究者らとの間ですれ違いが起きている。　「（ＦＢの）主要な機能が有害な分断を引き起こす証拠はほとんどないことを示した」。論文が発表されたその日、メタのニック・クレッグ社長（元英副首相）はそう述べ、「画期的な研究だ」とたたえた。　一方、研究陣のリーダーである米ニューヨーク大のジョシュア・タッカー教授は読売新聞の取材に、「ＦＢが政治的偏向を引き起こさないことを決定的に示すものではない」と語る。調査が別の時期や他国で行われた場合、違う結果が出た可能性があると強調する。　「メタは自分たちに都合がいい発表をした」。論文発表の翌日、英ケンブリッジ大で講演した元社員のフランシス・ハウゲン氏はそうメタを批判した。 　ハウゲン氏は２１年１０月、米議会公聴会で、ＦＢが社会の分断をあおったと告発している。「この調査でアルゴリズムが無罪と結論づけるなら、問題を 矮小（わいしょう） 化している」と語気を強めた。 1 2 3