[社説]東証は市場再編の成果高める改革継続を

プライム市場を離れて、スタンダード市場に移る意向を示した企業は48社にのぼる(東京証券取引所)東京証券取引所で事実上の最上位のプライム市場を離れ、スタンダード市場に移る企業が相次いでいる。市場再編に伴う猶予策が本来の市場の線引きを曖昧にしていただけに、こうした動きが広がれば投資の判断がしやすくなる。取引の活性化へ東証は再編の成果を高める改革を続けてほしい。東証は従来の1、2部、ジャスダックなどの市場区分を見直し、2022年4月にプライム、スタンダード、グロースの3つに再編した。東証1部が全上場企業の6割にまで膨らんでいた状況を変えることが狙いの一つだった。プライムでは流通時価総額など上場の基準を上げた。ただすぐには振り分けず、今は未達でも経営改善を続けるならプライム上場を維持できるとする経過措置を設けた。そうした未達企業は22年末時点で269社あった。東証は経過措置の期限を「当分の間」と当初曖昧にしていたが、1月に「25年3月末」と明示。その後1年の改善期間中に条件を満たせなければ上場廃止の可能性が生じる。この方針が出されたことで、7月中旬時点で48社がプライムをやめる意向を表明した。プライムは「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場」とされる。規模が小さく、対応する経営資源も限られる企業もあろう。身の丈に合う市場へ移る判断を歓迎したい。企業戦略に合わせて適した上場市場を選ぶことが大切だ。プライム市場はさらに磨きをかけねばならない。世界の投資家を意識するのなら英文での情報開示が重要であり、日本語との時間差も縮めるようにしたい。政府はプライム上場企業に対して、30年までに女性役員比率を30%に高めるよう促した。多様性の向上は日本企業の課題であり、率先して対応を急いでほしい。グロース市場の改革にも着手すべきだ。新規株式公開(IPO)時の企業規模の小ささが指摘される。上場前に企業が育つ非上場市場の厚みのなさも課題だ。ハイテク企業が躍進する米国のような市場環境も参考に、現状を検証して有効な施策を練ってほしい。プライム上場は基準の未達企業を除いてもなお1500社を超える。日本を代表する市場としてどのような姿が望ましいか中長期的な議論がさらに必要だ。世界から資金が集まる魅力ある市場へ、改革努力に終わりはない。

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[社説]東証は市場再編の成果高める改革継続を

東京証券取引所で事実上の最上位のプライム市場を離れ、スタンダード市場に移る企業が相次いでいる。市場再編に伴う猶予策が本来の市場の線引きを曖昧にしていただけに、こうした動きが広がれば投資の判断がしやすくなる。取引の活性化へ東証は再編の成果を高める改革を続けてほしい。

東証は従来の1、2部、ジャスダックなどの市場区分を見直し、2022年4月にプライム、スタンダード、グロースの3つに再編した。東証1部が全上場企業の6割にまで膨らんでいた状況を変えることが狙いの一つだった。

プライムでは流通時価総額など上場の基準を上げた。ただすぐには振り分けず、今は未達でも経営改善を続けるならプライム上場を維持できるとする経過措置を設けた。そうした未達企業は22年末時点で269社あった。

東証は経過措置の期限を「当分の間」と当初曖昧にしていたが、1月に「25年3月末」と明示。その後1年の改善期間中に条件を満たせなければ上場廃止の可能性が生じる。この方針が出されたことで、7月中旬時点で48社がプライムをやめる意向を表明した。

プライムは「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場」とされる。規模が小さく、対応する経営資源も限られる企業もあろう。身の丈に合う市場へ移る判断を歓迎したい。企業戦略に合わせて適した上場市場を選ぶことが大切だ。

プライム市場はさらに磨きをかけねばならない。世界の投資家を意識するのなら英文での情報開示が重要であり、日本語との時間差も縮めるようにしたい。

政府はプライム上場企業に対して、30年までに女性役員比率を30%に高めるよう促した。多様性の向上は日本企業の課題であり、率先して対応を急いでほしい。

グロース市場の改革にも着手すべきだ。新規株式公開(IPO)時の企業規模の小ささが指摘される。上場前に企業が育つ非上場市場の厚みのなさも課題だ。ハイテク企業が躍進する米国のような市場環境も参考に、現状を検証して有効な施策を練ってほしい。

プライム上場は基準の未達企業を除いてもなお1500社を超える。日本を代表する市場としてどのような姿が望ましいか中長期的な議論がさらに必要だ。世界から資金が集まる魅力ある市場へ、改革努力に終わりはない。

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