[科学・ＩＴ] ノーベル受賞のカリコ氏ら会見「賞のための研究ではない、大切なのは役に立つものを作ること」

　【ワシントン＝冨山優介】新型コロナウイルスワクチンの開発に貢献し、２０２３年のノーベル生理学・医学賞受賞が決まった米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授（６８）とドリュー・ワイスマン教授（６４）は２日、米ペンシルベニア州の同大で記者会見に臨んだ。カリコ氏は「何かの賞のために研究しているわけではない。大切なのは役に立つものを作ることだ」と強調した。 人体を「薬の工場」にする斬新な手法、がん治療など幅広く応用が広がる…ノーベル生理学・医学賞 ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まり、記者会見で研究を振り返るカリコ氏（左）とワイスマン氏（２日、米ペンシルベニア州のペンシルベニア大で）＝ロイター　カリコ氏らは、遺伝物質「メッセンジャーＲＮＡ（ｍＲＮＡ）」を使ったワクチン開発の基盤になる成果を０５年に論文で発表し、コロナワクチンの実用化に大きな役割を果たした。 　会見の冒頭でカリコ氏は、１９９０年代後半に偶然、大学のコピー機の前でワイスマン氏と出会ったことを振り返り、「私がｍＲＮＡの話をしたら、興味を持ってくれて共同研究が始まった。彼との協力は楽しかった」と懐かしそうに語った。　また、科学者へのメッセージを問われ、「スポットライトを浴びたいのであれば、俳優や女優になればいい。でも、自分が問題を解決したいと思うのであれば、あなたは科学に向いている」とエールを送った。　一方のワイスマン氏は「自分の人生の中で、ノーベル賞を受賞することがあるとは思ってもいなかった。信じられないくらいに光栄だ」と話した。また、選考委員会側がワイスマン氏とすぐに連絡が取れず、カリコ氏から受賞を知らされたことを明らかにし、会見場の笑いを誘った。　ワイスマン氏は「彼女と話し、ｍＲＮＡが持つ可能性に気づいた」と振り返った。「論文発表も研究資金獲得もうまくいかなかったが、私たちは決してあきらめず、根気強く取り組んだ。だから、今ここにいる」と晴れやかな表情を見せた。