[トピックス] 昭和レトロ、あちこちネコ…東京・青梅を歩く

 ネコとレトロの町として知られる東京都青梅市。今回は青梅駅の東側を中心に散策しよう。 ペットと同行避難 備えを 「にゃにゃまがり」…ネコの看板やオブジェずらり まず、気になっていた場所を訪れたい。街歩きの下調べをしている時、地図アプリで駅近辺を表示したら「にゃにゃまがり」という不思議な名称が出てきたのだ。  探し歩くと、それは住宅街の中にあった。入り組んだ小道沿いにネコの看板やオブジェがずらり。青梅では、「西ノ猫町」とうたって町おこしを図っていると聞く。なぜネコなのか。 かつて江戸へ運ぶ商品の集積地だった青梅では、ネズミから蔵を守るネコは親しみ深い動物だった。25年前、地元商店主らが開く芸術祭の題材にネコが選ばれて作品が並ぶと、以降もネコの装飾が街に増えていったという。にゃにゃまがりも、「ななまがり」の名をネコにちなんで変えたそうだ。駄菓子屋を再現、ホーロー看板並べ昭和の雰囲気 旧青梅街道を東へ進む。「昭和レトロ」という言葉は青梅が発祥との説があり、駅近辺には昭和の風情を残した街並みがある。とりわけ歴史を感じさせる木造建築は、1999年に開館した「昭和レトロ商品博物館」。館内には駄菓子屋が再現され、古いホーロー看板も並ぶ。時代劇などの看板は、「最後の映画看板師」と呼ばれた久保板観氏の作だという。記者は名前しか知らなかった昭和の名優たちが、今にも動きだしそうだ。映画看板や赤電話など、昭和の風景が再現されている(8月4日、東京都青梅市で)=佐藤俊和撮影 階段を上がったところにある和室は「雪女の部屋」。明治期の作家・小泉八雲ことラフカディオ・ハーンは、調布村(現在の青梅市)出身の奉公人から聞いた話をもとに「雪女」を書いたという。部屋にはその資料が展示されている。小泉八雲の怪談「雪女」の舞台は青梅だという。橋のたもとに石碑があった  物語の「 縁(ゆかり) の地」があると聞き、足を運ぶ。多摩川にかかる調布橋のたもとに石碑があった。夏の太陽の下で、吹雪の風景を想像してみた。 都内唯一の木造映画館「シネマネコ」旧都立繊維試験場の建物を使った木造の映画館だ 戻る途中、木造の映画館「シネマネコ」を見つけた。涼しい館内でゆったり映画を……といきたいが、残念ながらきょうは取材のみ。 青梅駅周辺にはかつて三つの映画館があったが、昭和の頃に全て閉館し

A person who loves writing, loves novels, and loves life.Seeking objective truth, hoping for world peace, and wishing for a world without wars.
[トピックス] 昭和レトロ、あちこちネコ…東京・青梅を歩く

 ネコとレトロの町として知られる東京都青梅市。今回は青梅駅の東側を中心に散策しよう。

ペットと同行避難 備えを

「にゃにゃまがり」…ネコの看板やオブジェずらり

 まず、気になっていた場所を訪れたい。街歩きの下調べをしている時、地図アプリで駅近辺を表示したら「にゃにゃまがり」という不思議な名称が出てきたのだ。

 探し歩くと、それは住宅街の中にあった。入り組んだ小道沿いにネコの看板やオブジェがずらり。青梅では、「西ノ猫町」とうたって町おこしを図っていると聞く。なぜネコなのか。

 かつて江戸へ運ぶ商品の集積地だった青梅では、ネズミから蔵を守るネコは親しみ深い動物だった。25年前、地元商店主らが開く芸術祭の題材にネコが選ばれて作品が並ぶと、以降もネコの装飾が街に増えていったという。にゃにゃまがりも、「ななまがり」の名をネコにちなんで変えたそうだ。

駄菓子屋を再現、ホーロー看板並べ昭和の雰囲気

 旧青梅街道を東へ進む。「昭和レトロ」という言葉は青梅が発祥との説があり、駅近辺には昭和の風情を残した街並みがある。とりわけ歴史を感じさせる木造建築は、1999年に開館した「昭和レトロ商品博物館」。館内には駄菓子屋が再現され、古いホーロー看板も並ぶ。時代劇などの看板は、「最後の映画看板師」と呼ばれた久保板観氏の作だという。記者は名前しか知らなかった昭和の名優たちが、今にも動きだしそうだ。

映画看板や赤電話など、昭和の風景が再現されている(8月4日、東京都青梅市で)=佐藤俊和撮影
映画看板や赤電話など、昭和の風景が再現されている(8月4日、東京都青梅市で)=佐藤俊和撮影

 階段を上がったところにある和室は「雪女の部屋」。明治期の作家・小泉八雲ことラフカディオ・ハーンは、調布村(現在の青梅市)出身の奉公人から聞いた話をもとに「雪女」を書いたという。部屋にはその資料が展示されている。

小泉八雲の怪談「雪女」の舞台は青梅だという。橋のたもとに石碑があった
小泉八雲の怪談「雪女」の舞台は青梅だという。橋のたもとに石碑があった

 物語の「 ゆかり の地」があると聞き、足を運ぶ。多摩川にかかる調布橋のたもとに石碑があった。夏の太陽の下で、吹雪の風景を想像してみた。

都内唯一の木造映画館「シネマネコ」

旧都立繊維試験場の建物を使った木造の映画館だ
旧都立繊維試験場の建物を使った木造の映画館だ

 戻る途中、木造の映画館「シネマネコ」を見つけた。涼しい館内でゆったり映画を……といきたいが、残念ながらきょうは取材のみ。

 青梅駅周辺にはかつて三つの映画館があったが、昭和の頃に全て閉館したという。「この街に映画館を復活させたい」と考えた地元の飲食店主がプロジェクトを始めたところ、それに地元商店街が賛同。国登録有形文化財「旧都立繊維試験場」の施設を改修し、2021年にオープンさせた。

 都内唯一の木造映画館で、見上げればむき出しの (はり) が見える。閉館した新潟県十日町市のミニシアター「十日町シネマパラダイス」から譲り受けた座席にも味わいがある。

 最初に上映したのはアニメ「猫の恩返し」。以降は国内外、幅広いジャンルの作品を上映している。

カフェの看板にもネコ、通り過ぎる電車見下ろす

長い階段を上ると木々の隙間から市街地が見える
長い階段を上ると木々の隙間から市街地が見える

 「モダンニャイムス」「猫たちの沈黙」など映画の題名をもじった看板が並ぶ旧街道を歩いていると、右に立派な石の階段がある。上った先は室町時代の創建と伝わる「住吉神社」。前出の芸術祭の時に奉納されたネコの神様「 阿於芽猫祖神あおめびょうそじん 」もまつられている。

 JR青梅線の線路をまたぐ橋の上に立つと、またもネコに遭遇。こちらを見ているクロネコの顔は、カフェの看板のようだ。

 「夏への扉」という店名は、SF小説の巨匠、ロバート・A・ハインラインの作品からとったと、店主の山田勝一さん(73)が教えてくれた。小説にネコが登場するから、この看板なのか。

青梅線沿いにあるカフェ。ネコの看板が通り過ぎる電車を見下ろしている
青梅線沿いにあるカフェ。ネコの看板が通り過ぎる電車を見下ろしている
こだわりのコーヒーとくるみを使ったケーキ
こだわりのコーヒーとくるみを使ったケーキ

 コーヒーの香りに包まれ、窓際の席に座る。眼下を電車が走り抜ける。時折、訪れる心地よい風が、夏空と自分をつないでくれている気がした。(加藤遼也)※9月7日夕刊、我がまち再発見 東京・青梅編<下>より

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