[国際] [朝鮮戦争 休戦70年]<1>核脅威の時代到来…「力こそ平和」韓国、米と連携

 朝鮮戦争(1950~53年)の休戦協定締結から27日で70年。緊張が続く「終わらない戦争」の今を韓国から伝える。  韓国中部にある在韓米空軍 烏山(オサン) 基地。今月18日、F16戦闘機が 轟音(ごうおん) を響かせ、立て続けに離陸していた。  「有事が今夜起きる可能性もある」。基地所属パイロットの一人は、真剣な表情で語った。 13日には、米国から核兵器を搭載できる戦略爆撃機B52Hが朝鮮半島上空に飛来。全長約50メートルの機体の左右を米空軍のF16と韓国空軍の戦闘機が護衛し、飛行訓練を行った。ベテランパイロットの米空軍大佐のキャスリン・ゲッキ(43)は取材に対し、「すべては抑止力を高める態勢を構築するためだ」と語った。◇  韓国大統領の 尹錫悦(ユンソンニョル) は、朝鮮戦争の勃発から73年の6月25日、フェイスブックにこう書き込んだ。  「強力な力だけが真の平和を保障する」 昨年5月に就任した尹は保守派として、米韓同盟の強化を最優先課題としている。米国の「核の傘」を含む拡大抑止で、北朝鮮の挑発に対抗するためだ。朝鮮半島上空でB52Hの訓練が増えている。  背景に北朝鮮の核・ミサイルへの危機感がある。朝鮮労働党総書記の 金正恩(キムジョンウン) は昨年から、戦術核ミサイルで韓国を先制攻撃する可能性を示唆し始めた。 ◇  米韓は北朝鮮のけん制と同時に、韓国世論の安保に対する不安を 払拭(ふっしょく) しようとしている。 19日、米戦略原潜ケンタッキーに乗艦した韓国の尹錫悦大統領(左)=韓国大統領府提供  今月19日、尹は韓国南部の 釜山(プサン) を訪問し、42年ぶりに韓国に寄港した米戦略原子力潜水艦(SSBN)の「ケンタッキー」に乗り込んだ。軍事機密の多いSSBNに外国首脳が乗艦するのは初めてで、尹の強い希望で実現した。  韓国国防省次官の 申範●(シンポムチョル) は、「我々は北朝鮮に対し、『核を使えば金正恩政権は終末を迎える』というメッセージを伝えようとしている。北朝鮮が核を使用できない状況をつくるのが我々の戦略だ」と語る。(●は「さんずい」に「徹」のつくり) ◇  左派陣営は保守政権の厳しい対北政策を批判している。1990年代後半以降、左派系大統領の 金大中(キムデジュン) 、 盧武鉉(ノムヒョン) 、 文在寅(ムンジェイン) の3人は、抑止力強

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[国際] [朝鮮戦争 休戦70年]<1>核脅威の時代到来…「力こそ平和」韓国、米と連携

 朝鮮戦争(1950~53年)の休戦協定締結から27日で70年。緊張が続く「終わらない戦争」の今を韓国から伝える。

 韓国中部にある在韓米空軍 烏山オサン 基地。今月18日、F16戦闘機が 轟音ごうおん を響かせ、立て続けに離陸していた。

 「有事が今夜起きる可能性もある」。基地所属パイロットの一人は、真剣な表情で語った。

 13日には、米国から核兵器を搭載できる戦略爆撃機B52Hが朝鮮半島上空に飛来。全長約50メートルの機体の左右を米空軍のF16と韓国空軍の戦闘機が護衛し、飛行訓練を行った。ベテランパイロットの米空軍大佐のキャスリン・ゲッキ(43)は取材に対し、「すべては抑止力を高める態勢を構築するためだ」と語った。

 韓国大統領の 尹錫悦ユンソンニョル は、朝鮮戦争の勃発から73年の6月25日、フェイスブックにこう書き込んだ。

 「強力な力だけが真の平和を保障する」

 昨年5月に就任した尹は保守派として、米韓同盟の強化を最優先課題としている。米国の「核の傘」を含む拡大抑止で、北朝鮮の挑発に対抗するためだ。朝鮮半島上空でB52Hの訓練が増えている。

 背景に北朝鮮の核・ミサイルへの危機感がある。朝鮮労働党総書記の 金正恩キムジョンウン は昨年から、戦術核ミサイルで韓国を先制攻撃する可能性を示唆し始めた。

 米韓は北朝鮮のけん制と同時に、韓国世論の安保に対する不安を 払拭ふっしょく しようとしている。

19日、米戦略原潜ケンタッキーに乗艦した韓国の尹錫悦大統領(左)=韓国大統領府提供
19日、米戦略原潜ケンタッキーに乗艦した韓国の尹錫悦大統領(左)=韓国大統領府提供

 今月19日、尹は韓国南部の 釜山プサン を訪問し、42年ぶりに韓国に寄港した米戦略原子力潜水艦(SSBN)の「ケンタッキー」に乗り込んだ。軍事機密の多いSSBNに外国首脳が乗艦するのは初めてで、尹の強い希望で実現した。

 韓国国防省次官の 申範●(シンポムチョル) は、「我々は北朝鮮に対し、『核を使えば金正恩政権は終末を迎える』というメッセージを伝えようとしている。北朝鮮が核を使用できない状況をつくるのが我々の戦略だ」と語る。(●は「さんずい」に「徹」のつくり)

 左派陣営は保守政権の厳しい対北政策を批判している。1990年代後半以降、左派系大統領の 金大中キムデジュン盧武鉉ノムヒョン文在寅ムンジェイン の3人は、抑止力強化よりも対話を前面に押し出し、北朝鮮を非核化に導こうと試みた。

 「韓国も米国も、北朝鮮と対話ができていない。意思疎通できないため、偶発的な衝突があれば事態がエスカレートしかねない。極めて危険な状況だ」

 文前政権で大統領統一外交安保特別補佐官だった 文正仁ムンジョンイン は、尹政権の取り組みをこう酷評する。

 文在寅は米朝の「仲介役」を自任し、2018年6月のシンガポールでの米大統領ドナルド・トランプと金正恩の初の米朝首脳会談の実現に奔走。朝鮮戦争の「終戦宣言」を米朝に提案したが、結果を出せなかった。

 保守と左派の安全保障観が対極にある韓国の対北朝鮮政策は、「抑止」と「対話」の間を揺れ動いた。この間、北朝鮮は着実に核戦力を向上させた。

 北朝鮮の核・ミサイル開発は、朝鮮戦争で南北の武力統一に失敗した 金日成キムイルソン が着手し、息子で総書記の 金正日キムジョンイル 、孫の金正恩へと受け継がれている。正恩政権は昨年、約70発の弾道ミサイルなどを発射し、年間の発射数で過去最多だった。

 朝鮮半島は、先行きが不透明な「核脅威の時代」を迎えている。(敬称略)

北、戦術核強化 近く核実験も

 北朝鮮は最近、戦術核兵器の開発を加速している。威力を抑えた核弾頭を短距離弾道ミサイルなどに搭載し、韓国国内の軍事施設の攻撃などを想定しているとみられる。

 金正恩政権は2021年1月の朝鮮労働党大会で戦術核開発を掲げた。今年3月には、直径40~50センチの戦術核弾頭「火山31」の模型が公開された。性能確認のため、7回目の核実験を近く行うとの観測がある。

 韓国陸軍大佐で、韓国国防研究院の北朝鮮軍事研究室長を務める 李相旻イサンミン は「北朝鮮は、様々なタイプの戦術核ミサイルを同時に、奇襲的に発射する能力を構築しようとしている」と指摘する。

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