大学10兆円ファンド、604億円赤字 22年度は厳しい船出

科学技術振興機構(JST)は7日、資産10兆円規模の「大学ファンド」の2022年度の運用実績が604億円の赤字だったと発表した。運用成績はマイナス0.6%。年度を通じた運用成果の公表は初めてで、厳しい船出となった。【関連記事】・東大など大学ファンド候補3校 研究・財務戦略に強み・大学10兆円ファンド、支援対象の審査開始 年4%目標ファンドは巨額助成で世界トップの大学をつくるため政府が創設した。株式の配当や確定した損益を合算した損益計算書上の当期利益は742億円となった。一方で3月末時点で含み損は1259億円に上った。JSTによると、助成財源はファンドの財務状況や当期損益なども踏まえて決める。文部科学省幹部は「運用益の範囲内で助成をするため、成果が出なければ支援が難しくなる」としている。23年3月末時点の運用資産の比率は「グローバル債券」が55%、「グローバル株式」が17%となった。初年度は財政基盤の安定性を優先するためにリスクの高い資産の比率を低く抑えた。世界的な金利上昇で債券による損失が1263億円となった。株式の運用益は655億円と小さく、全体の運用実績は赤字となった。支援対象の「国際卓越研究大学」は、応募した10校の中から東京大、京都大、東北大に絞られた。秋に1〜2校を選定する方針だ。米ハーバード大は基金で不動産や未公開株などのオルタナティブ投資を進め、18年度に収入の約35%にあたる2000億円超の運用益を得た。約30年前に8000億円程度だった基金は拡大を続け、19年時点で4.5兆円の基金を持つ。基金は米スタンフォード大が3.1兆円、英ケンブリッジ大で1兆円に上る。国内勢は20年度で慶応大が870億円、東大が190億円にとどまる。欧米の大学は、独自基金の運用益を学生への経済的支援、研究施設の維持管理や教授への給与などに充てる。欧米勢との資金力の差を埋めることをめざす大学ファンドは運用目標が国内の機関投資家としては高く年率4.49%で、26年度末までに3000億円の収益達成を目指す。市場環境が悪化した場合などに備え、運用益から2年分の支援額にあたる6000億円を上限に積み立ても行う。23年3月末時点の運用資産額をみると、グローバル株式では米国株が9363億円と最も多くなった。日本株は4205億円で続き、この2国で株式運用の多くを占めた。債券では米国や日本に次

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大学10兆円ファンド、604億円赤字 22年度は厳しい船出

科学技術振興機構(JST)は7日、資産10兆円規模の「大学ファンド」の2022年度の運用実績が604億円の赤字だったと発表した。運用成績はマイナス0.6%。年度を通じた運用成果の公表は初めてで、厳しい船出となった。

ファンドは巨額助成で世界トップの大学をつくるため政府が創設した。株式の配当や確定した損益を合算した損益計算書上の当期利益は742億円となった。一方で3月末時点で含み損は1259億円に上った。

JSTによると、助成財源はファンドの財務状況や当期損益なども踏まえて決める。文部科学省幹部は「運用益の範囲内で助成をするため、成果が出なければ支援が難しくなる」としている。

23年3月末時点の運用資産の比率は「グローバル債券」が55%、「グローバル株式」が17%となった。初年度は財政基盤の安定性を優先するためにリスクの高い資産の比率を低く抑えた。

世界的な金利上昇で債券による損失が1263億円となった。株式の運用益は655億円と小さく、全体の運用実績は赤字となった。

支援対象の「国際卓越研究大学」は、応募した10校の中から東京大、京都大、東北大に絞られた。秋に1〜2校を選定する方針だ。

米ハーバード大は基金で不動産や未公開株などのオルタナティブ投資を進め、18年度に収入の約35%にあたる2000億円超の運用益を得た。約30年前に8000億円程度だった基金は拡大を続け、19年時点で4.5兆円の基金を持つ。

基金は米スタンフォード大が3.1兆円、英ケンブリッジ大で1兆円に上る。国内勢は20年度で慶応大が870億円、東大が190億円にとどまる。

欧米の大学は、独自基金の運用益を学生への経済的支援、研究施設の維持管理や教授への給与などに充てる。

欧米勢との資金力の差を埋めることをめざす大学ファンドは運用目標が国内の機関投資家としては高く年率4.49%で、26年度末までに3000億円の収益達成を目指す。市場環境が悪化した場合などに備え、運用益から2年分の支援額にあたる6000億円を上限に積み立ても行う。

23年3月末時点の運用資産額をみると、グローバル株式では米国株が9363億円と最も多くなった。日本株は4205億円で続き、この2国で株式運用の多くを占めた。債券では米国や日本に次いでフランス、オーストラリア、スペインが多かった。

大学ファンドは「基本ポートフォリオ構築までの期間は(年率4%超の)運用目標は適用されない」としている。資金を財政融資資金などに依存するため自己資本比率が低く、大学への長期的な資金提供に支障が生じないようにするためだ。

ただ日本総研の河村小百合氏は「運用目標は年金など他の機関投資家と比較してもかなり高く、安定して収益を出せるようになるのは簡単ではない」と指摘している。

(犬嶋瑛、大元裕行、佐伯遼)

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