[旅] 韓国・大邱で夏バテ対策に大人気「チムカルビ」…カルビの蒸し煮です

ソウル支局 中川孝之  韓国南東部の 大邱(テグ) は盆地で、韓国で最も暑い都市として知られる。地元に愛される夏バテ対策の名物が「チムカルビ(カルビの蒸し煮)」。牛の骨付きカルビを唐辛子粉やニンニクなどで煮込んだ、見た目も味も辛い郷土料理だ。 埼玉で大評判「ヨーロッパ野菜の菜園風ピッツァ」…ヘルシーなので、1人で完食しても罪悪感ゼロです 100人分の骨付きカルビを大鍋で使い込んだアルマイト鍋に入れたまま提供される「チムカルビ」  大邱中心部の 東仁洞(トンインドン) 地区には10軒の専門店が集まる。このうち1972年創業の「 鳳山(ポンサン) チムカルビ」は、チムカルビ(韓国産牛で1人前3万ウォン=約3300円)目当てにソウルからも客が訪れる人気店だ。  2代目店主の 崔(チェ)炳(ビョン)烈(ヨル) さん(54)に調理場を案内してもらった。まず100人分の骨付きカルビを大鍋でゆでる。注文が入ると、カルビを小分けにして小鍋に入れ、強火にかける。すりつぶしたニンニクや唐辛子粉、コショウ、砂糖、梅の汁などを加えてしばらく煮込めば出来上がりだ。 ピリッとした辛さとほのかな甘み 熱々のカルビをゴマの葉やサンチュで包んでほおばると、ピリッとした辛さとほのかな甘みが口に広がる。額に汗がにじむが、やみつきになる辛さで箸が止まらない。最後にご飯を鍋底のタレとからめて食べる。 崔さんがレシピの由来を教えてくれた。専門店を創業した母(81)は60年代後半、建設ラッシュに沸く大邱で労働者向けの食堂を営んでいた。「肉料理が食べたい」とリクエストを受けた母は、「栄養豊富な牛カルビを、暑さに負けないように辛く煮て、ニンニクで力をつけてもらおう」と考案した。崔炳烈さん ソウルでファッション関係の仕事をしていた崔さんは、14年前に渋々店を継いだ。常連客から「卒園式も卒業式もこの店でカルビを食べた」「父親と食べた記憶がなつかしい」と話を聞くうち、「地域の思い出の味を守り抜く」と決心した。忘れられない辛さは、しっかり大邱に根付いた。元々は宮廷料理の「カルビチム」辛くない「カルビチム」は高級料理の趣がある 韓国には牛の骨付きカルビを使った「カルビチム」という料理もある。名前が「チムカルビ」と紛らわしいが、カルビチムはしょうゆなどで煮込んだもので、全く辛くない

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[旅] 韓国・大邱で夏バテ対策に大人気「チムカルビ」…カルビの蒸し煮です
ソウル支局 中川孝之

 韓国南東部の 大邱(テグ) は盆地で、韓国で最も暑い都市として知られる。地元に愛される夏バテ対策の名物が「チムカルビ(カルビの蒸し煮)」。牛の骨付きカルビを唐辛子粉やニンニクなどで煮込んだ、見た目も味も辛い郷土料理だ。

埼玉で大評判「ヨーロッパ野菜の菜園風ピッツァ」…ヘルシーなので、1人で完食しても罪悪感ゼロです

100人分の骨付きカルビを大鍋で

使い込んだアルマイト鍋に入れたまま提供される「チムカルビ」
使い込んだアルマイト鍋に入れたまま提供される「チムカルビ」

 大邱中心部の 東仁洞(トンインドン) 地区には10軒の専門店が集まる。このうち1972年創業の「 鳳山(ポンサン) チムカルビ」は、チムカルビ(韓国産牛で1人前3万ウォン=約3300円)目当てにソウルからも客が訪れる人気店だ。

 2代目店主の (チェ)(ビョン)(ヨル) さん(54)に調理場を案内してもらった。まず100人分の骨付きカルビを大鍋でゆでる。注文が入ると、カルビを小分けにして小鍋に入れ、強火にかける。すりつぶしたニンニクや唐辛子粉、コショウ、砂糖、梅の汁などを加えてしばらく煮込めば出来上がりだ。

ピリッとした辛さとほのかな甘み

 熱々のカルビをゴマの葉やサンチュで包んでほおばると、ピリッとした辛さとほのかな甘みが口に広がる。額に汗がにじむが、やみつきになる辛さで箸が止まらない。最後にご飯を鍋底のタレとからめて食べる。

 崔さんがレシピの由来を教えてくれた。専門店を創業した母(81)は60年代後半、建設ラッシュに沸く大邱で労働者向けの食堂を営んでいた。「肉料理が食べたい」とリクエストを受けた母は、「栄養豊富な牛カルビを、暑さに負けないように辛く煮て、ニンニクで力をつけてもらおう」と考案した。

崔炳烈さん
崔炳烈さん

 ソウルでファッション関係の仕事をしていた崔さんは、14年前に渋々店を継いだ。常連客から「卒園式も卒業式もこの店でカルビを食べた」「父親と食べた記憶がなつかしい」と話を聞くうち、「地域の思い出の味を守り抜く」と決心した。忘れられない辛さは、しっかり大邱に根付いた。

元々は宮廷料理の「カルビチム」

辛くない「カルビチム」は高級料理の趣がある
辛くない「カルビチム」は高級料理の趣がある

 韓国には牛の骨付きカルビを使った「カルビチム」という料理もある。名前が「チムカルビ」と紛らわしいが、カルビチムはしょうゆなどで煮込んだもので、全く辛くない。元々は宮廷料理だった。今でも秋夕(旧盆)などに一般家庭で食べる伝統が残っている。

屋台街でキンパ・トッポギ・韓国式おでん

 大邱は古くからの交通の要衝で、朝鮮王朝時代の開設とされる「 西門(ソムン) 市場」が有名だ。縦横に延びる長大なアーケードには乾物や生鮮食品、衣服などを扱う約4000店が並ぶ。屋台が多く、軽食で小腹を満たしながら散策するのがお勧めだ。

 屋台街は夕方が特に混み合う。地元の人たちが職場や学校から帰宅する途中に、韓国のり巻き「キンパ」や、モチを甘辛く煮込んだ「トッポギ」、海産物入りのチヂミなどを味わっている。

終日にぎわう西門市場。竹串で食べる韓国式おでんが人気だ
終日にぎわう西門市場。竹串で食べる韓国式おでんが人気だ

 魚のすり身で作った練り物を竹串に刺した韓国式おでんも人気だ。値上がりが進むが、屋台グルメなら5000ウォン(約550円)あれば十分楽しめる。

 大邱は韓国政治では保守の牙城として知られ、大統領も輩出した。1988年ソウル五輪開催に尽力した 盧泰愚(ノテウ) 、初の女性大統領となった (パク)槿恵(クネ) の両氏が大邱生まれだ。朴氏の父・ (パク)(チョン)() 元大統領もゆかりが深い。チムカルビの由来を巡っても、朴正熙氏が民家で食べておいしさに感動し、出店を勧めたのが最初という説が伝わっている。

 国内外の総支局長が、地域の自慢の味を紹介します。

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