特別警報、伝え方改善探る 運用10年で25回発表

数十年に1度の、経験したことがないような災害の危険性を伝える「特別警報」の運用開始から10年がたった。伝え方などの改善を図りながら、気象庁は2015年の関東・東北豪雨や18年の西日本豪雨など気象分野で25回、35都道府県に発表。情報として定着しつつあるが、専門家は「どんな被害が出たか精度の検証が不十分。今後もデータに基づく伝え方の工夫が必要だ」と指摘する。2019年10月、台風19号による大雨特別警報発表について説明する気象庁の担当者(気象庁)=共同「水害や土砂災害の危険がなくなったわけではない」。局地的な豪雨をもたらす線状降水帯が発生した福岡、大分両県に大雨特別警報が発表された今年7月10日。国土交通省の担当者は気象庁との合同会見で、特別警報を警報に切り替える直前、こう強調した。「切り替え」が、住民の安心につながらないよう注意喚起するためだ。特別警報を「解除」ではなく「切り替え」と表現し始めたのは20年。一度の災害で過去最多となる13都県に大雨特別警報が発表された19年の台風19号で、「解除」発表後に河川が氾濫した地域があった反省からだ。さらに、被災地の住民を対象にしたインターネット調査では3割が「解除で安全な状況となったと考え、避難先から戻った」と回答した。気象庁の担当者は「情報の伝え方など運用改善は常に取り組んでいる」と話す。もう一つ気象庁が力を入れるのが精度の向上だ。当初、大雨特別警報は国内を約5キロ四方に分け雨量などの基準を満たした場合に発表していたが、現在は1キロ四方の土砂災害や浸水害の危険度などから判断するようになった。対象も県単位に広がっていたが、市町村単位に絞り込めるようになった。静岡大防災総合センターの牛山素行教授(災害情報学)は10年たって「特別警報という情報の存在については既に定着したと言っていい」と指摘。一方で、線状降水帯と同様に「本来の役割以上にパワーワード化して『特別警報ではないから大丈夫』といった受け止め方が顕在化していないか懸念している」という。「特別警報に限らず『この情報が出たら、どんな被害が、どれだけ発生しているか』という検証が不十分。今後は『特別警報が出たから、こんな危険性がある』と過去のデータに基づく具体的な伝え方をしていってほしい」と強調した。〔共同〕特別警報 警報の基準をはるかに上回る大雨や大津波などが想定され、重大な災

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特別警報、伝え方改善探る 運用10年で25回発表

数十年に1度の、経験したことがないような災害の危険性を伝える「特別警報」の運用開始から10年がたった。伝え方などの改善を図りながら、気象庁は2015年の関東・東北豪雨や18年の西日本豪雨など気象分野で25回、35都道府県に発表。情報として定着しつつあるが、専門家は「どんな被害が出たか精度の検証が不十分。今後もデータに基づく伝え方の工夫が必要だ」と指摘する。

「水害や土砂災害の危険がなくなったわけではない」。局地的な豪雨をもたらす線状降水帯が発生した福岡、大分両県に大雨特別警報が発表された今年7月10日。国土交通省の担当者は気象庁との合同会見で、特別警報を警報に切り替える直前、こう強調した。「切り替え」が、住民の安心につながらないよう注意喚起するためだ。

特別警報を「解除」ではなく「切り替え」と表現し始めたのは20年。一度の災害で過去最多となる13都県に大雨特別警報が発表された19年の台風19号で、「解除」発表後に河川が氾濫した地域があった反省からだ。さらに、被災地の住民を対象にしたインターネット調査では3割が「解除で安全な状況となったと考え、避難先から戻った」と回答した。気象庁の担当者は「情報の伝え方など運用改善は常に取り組んでいる」と話す。

もう一つ気象庁が力を入れるのが精度の向上だ。当初、大雨特別警報は国内を約5キロ四方に分け雨量などの基準を満たした場合に発表していたが、現在は1キロ四方の土砂災害や浸水害の危険度などから判断するようになった。対象も県単位に広がっていたが、市町村単位に絞り込めるようになった。

静岡大防災総合センターの牛山素行教授(災害情報学)は10年たって「特別警報という情報の存在については既に定着したと言っていい」と指摘。一方で、線状降水帯と同様に「本来の役割以上にパワーワード化して『特別警報ではないから大丈夫』といった受け止め方が顕在化していないか懸念している」という。

「特別警報に限らず『この情報が出たら、どんな被害が、どれだけ発生しているか』という検証が不十分。今後は『特別警報が出たから、こんな危険性がある』と過去のデータに基づく具体的な伝え方をしていってほしい」と強調した。〔共同〕

特別警報 警報の基準をはるかに上回る大雨や大津波などが想定され、重大な災害が起こる恐れが著しく高まっている場合に気象庁が発表する。2011年の紀伊半島豪雨などで警報では危機感を伝えきれなかったとの反省から、13年8月30日に運用を始めた。「大雨」など9種類がある。気象では、土壌中の雨量や積雪量、台風の中心気圧、最大風速など客観的な指標を設けて判断。津波は3メートル超、火山は居住地域に重大な被害を及ぼす噴火、地震は震度6弱以上などが予想される場合が対象となる。「大雪」や「津波」の特別警報はまだ発表されたことはない。〔共同〕

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