[社会] 豚コレラ封じ込めへ、「養豚王国」九州が厳戒態勢…佐賀・福岡など北部4県できょうワクチン開始

 家畜伝染病「CSF(豚熱= 豚(とん) コレラ)」の感染が31年ぶりに確認された九州で養豚農家や自治体が警戒を強めている。飼育頭数が全国の約3割を占める「養豚王国」。福岡など北部4県では19日にワクチン接種が始まるが、接種しても全てが免疫を獲得できないこともあり、専門家はウイルスを農場に入れない対策の徹底を呼びかけている。(今泉遼、小野悠紀) 「一刻も早く打たせて」殺処分した豚を詰めた袋を埋却場所に運搬する作業員ら(4日、佐賀県唐津市で)=佐賀県提供 「一頭でも感染が出れば全頭殺処分となり、養豚農家は廃業しかねない。農家は相当ピリピリしている」  全国トップの約115万頭を飼育する鹿児島県で、県黒豚生産者協議会の会長を務める南九州市の養豚農家・川崎高義さん(78)は語気を強める。感染拡大防止のため、むやみに出歩かず、来客を断るなどする農家は多いという。 農林水産省は昨年12月、家畜保健衛生所の獣医師に加え、獣医師免許を持たない生産者も研修会の受講などでワクチンを打てるよう防疫指針を改定。各県が打ち手の確保を進める中、佐賀、福岡などの北部4県では19日に接種が始まる。 鹿児島など南部3県は、今月下旬の開始で調整中。同県では獣医師約110人では足りず、約530の各農場で最低でも1人ずつ打ち手を確保するため、研修会を40回予定する。ブランド豚「かごしま黒豚」を約850頭飼育する川崎さんは研修を終え、「黒豚を守るため、一刻も早く打たせてもらいたい」と話す。埋却地付近から液体、感染封じ込め綱渡り 8月30、31日と豚熱の発生が確認された佐賀県では、2養豚場で計1万860頭が殺処分された。殺処分と豚舎の消毒は終わったが、埋却は今も続く。 養豚場に隣接する埋却場所付近の斜面から豚の血液を含むとみられる液体がにじみ出る状況は止まっていないが、流入した川の水を遺伝子検査したところウイルスは確認されなかった。 県は「感染が拡大する可能性は低い」とみるが、感染の封じ込めに向けて綱渡りの状態だ。県畜産課の森隆幸課長は「感染拡大の防止効果になれば」とワクチン効果を期待する。接種始まれば輸出ストップ ただ、接種が始まれば、豚肉の輸出はできなくなる。昨年の輸出量は計2377トン、輸出額は23億円で、主な輸出先は香港やシンガポール。国内生産量に占める輸出割合は0・3%だが、農水省の担当者は

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[社会] 豚コレラ封じ込めへ、「養豚王国」九州が厳戒態勢…佐賀・福岡など北部4県できょうワクチン開始

 家畜伝染病「CSF(豚熱= とん コレラ)」の感染が31年ぶりに確認された九州で養豚農家や自治体が警戒を強めている。飼育頭数が全国の約3割を占める「養豚王国」。福岡など北部4県では19日にワクチン接種が始まるが、接種しても全てが免疫を獲得できないこともあり、専門家はウイルスを農場に入れない対策の徹底を呼びかけている。(今泉遼、小野悠紀)

「一刻も早く打たせて」

殺処分した豚を詰めた袋を埋却場所に運搬する作業員ら(4日、佐賀県唐津市で)=佐賀県提供
殺処分した豚を詰めた袋を埋却場所に運搬する作業員ら(4日、佐賀県唐津市で)=佐賀県提供

 「一頭でも感染が出れば全頭殺処分となり、養豚農家は廃業しかねない。農家は相当ピリピリしている」

 全国トップの約115万頭を飼育する鹿児島県で、県黒豚生産者協議会の会長を務める南九州市の養豚農家・川崎高義さん(78)は語気を強める。感染拡大防止のため、むやみに出歩かず、来客を断るなどする農家は多いという。

 農林水産省は昨年12月、家畜保健衛生所の獣医師に加え、獣医師免許を持たない生産者も研修会の受講などでワクチンを打てるよう防疫指針を改定。各県が打ち手の確保を進める中、佐賀、福岡などの北部4県では19日に接種が始まる。

 鹿児島など南部3県は、今月下旬の開始で調整中。同県では獣医師約110人では足りず、約530の各農場で最低でも1人ずつ打ち手を確保するため、研修会を40回予定する。ブランド豚「かごしま黒豚」を約850頭飼育する川崎さんは研修を終え、「黒豚を守るため、一刻も早く打たせてもらいたい」と話す。

埋却地付近から液体、感染封じ込め綱渡り

 8月30、31日と豚熱の発生が確認された佐賀県では、2養豚場で計1万860頭が殺処分された。殺処分と豚舎の消毒は終わったが、埋却は今も続く。

 養豚場に隣接する埋却場所付近の斜面から豚の血液を含むとみられる液体がにじみ出る状況は止まっていないが、流入した川の水を遺伝子検査したところウイルスは確認されなかった。

 県は「感染が拡大する可能性は低い」とみるが、感染の封じ込めに向けて綱渡りの状態だ。県畜産課の森隆幸課長は「感染拡大の防止効果になれば」とワクチン効果を期待する。

接種始まれば輸出ストップ

 ただ、接種が始まれば、豚肉の輸出はできなくなる。昨年の輸出量は計2377トン、輸出額は23億円で、主な輸出先は香港やシンガポール。国内生産量に占める輸出割合は0・3%だが、農水省の担当者は「九州にも輸出に力を入れる事業者がおり、すでに一部の国・地域からは(ワクチン非接種地域の)北海道産に切り替える話もある」と明かす。

 接種しても免疫を獲得できる豚は8割程度とされ、ワクチンだけで感染を防ぎきることは難しいという。宮崎大の末吉益雄教授(家畜衛生学)は「養豚が盛んな九州南部に広がれば、豚肉も価格が上がり、食卓にも影響しかねない。養豚農家はワクチンを打っても油断せず、豚舎に入る際の長靴の履き替えや消石灰の頻繁な散布を徹底し、国や自治体はその支援をするべきだ」と指摘する。

◆豚熱 =豚とイノシシがかかる病気で発熱や食欲不振などの症状が出て致死率も高い。人にうつらず、感染した豚肉を食べても影響はない。2018年、国内で26年ぶりに岐阜県で確認されてから終息していない。

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