[社説]日本車は謙虚な学びでEV化に対応を

高級車にもEVの波 英ロールス・ロイスが公開した電気自動車「スペクター」(6月、東京都新宿区)電気自動車(EV)の波が自動車市場の競争ルールを塗り替えつつある。エンジン時代に世界をリードした日本車各社は、過去の栄光にとらわれて後手に回ってはならない。先を走る海外の例から学んで事業モデルを刷新し、日本を引っ張る基幹産業として存在感をさらに発揮してほしい。国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年のプラグインハイブリッド車を含むEVの世界販売は1020万台に達し、全体の14%を占めた。今後も高成長が予想され、もはやニッチ商品ではない。EV化の波は自動車産業の全般に変革を迫るだろう。営業面では顧客との接点が多様化する。米テスラは実在の店舗ではなくオンライン販売が主力だ。日本でも韓国の現代自動車はカルチュア・コンビニエンス・クラブの商業施設でEVのカーシェアサービスを始め、三菱自動車はヤマダデンキでEVを販売する。開発面も革新が進む。仮想空間で現実世界のように様々な実験ができるデジタルツインの活用で、開発に要する時間が大幅に圧縮。その結果、「フルモデルチェンジは4年に1回」という常識は陳腐化し、スマホ並みの頻度で新車が投入されるようになるだろう。生産面では、テスラが先陣を切ったクルマのボディーを一体成型する技術が注目に値する。トヨタ自動車は6月に同様の手法を導入すると表明した。「リーン生産方式」と称される工場現場の効率の高さは日本車の競争力の源泉だけに、後れをとってはならない。部品調達も様変わりの予兆がある。従来は自動車会社の傘下に多数の部品メーカーがぶら下がる「系列」が威力を発揮した。EV時代は逆にバッテリー最大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)やニデック(旧日本電産)、独ボッシュなど系列の枠を超え複数の自動車会社と取引する巨大部品会社が台頭する。一連の環境変化を受け、スイスのビジネススクールIMDが5月に公表した自動車各社の「未来への備え」番付で、昨年2位のトヨタが今年は10位に下がった。ランキングに一喜一憂する必要はないが、常に上位だったトヨタの下落を警鐘と受け止めたい。次世代の全固体電池の開発はじめ日本勢の優位はまだまだ多い。自らの強みと他からの学びを相乗して、輝きを維持してほしい。

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[社説]日本車は謙虚な学びでEV化に対応を

電気自動車(EV)の波が自動車市場の競争ルールを塗り替えつつある。エンジン時代に世界をリードした日本車各社は、過去の栄光にとらわれて後手に回ってはならない。先を走る海外の例から学んで事業モデルを刷新し、日本を引っ張る基幹産業として存在感をさらに発揮してほしい。

国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年のプラグインハイブリッド車を含むEVの世界販売は1020万台に達し、全体の14%を占めた。今後も高成長が予想され、もはやニッチ商品ではない。

EV化の波は自動車産業の全般に変革を迫るだろう。

営業面では顧客との接点が多様化する。米テスラは実在の店舗ではなくオンライン販売が主力だ。日本でも韓国の現代自動車はカルチュア・コンビニエンス・クラブの商業施設でEVのカーシェアサービスを始め、三菱自動車はヤマダデンキでEVを販売する。

開発面も革新が進む。仮想空間で現実世界のように様々な実験ができるデジタルツインの活用で、開発に要する時間が大幅に圧縮。その結果、「フルモデルチェンジは4年に1回」という常識は陳腐化し、スマホ並みの頻度で新車が投入されるようになるだろう。

生産面では、テスラが先陣を切ったクルマのボディーを一体成型する技術が注目に値する。トヨタ自動車は6月に同様の手法を導入すると表明した。「リーン生産方式」と称される工場現場の効率の高さは日本車の競争力の源泉だけに、後れをとってはならない。

部品調達も様変わりの予兆がある。従来は自動車会社の傘下に多数の部品メーカーがぶら下がる「系列」が威力を発揮した。

EV時代は逆にバッテリー最大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)やニデック(旧日本電産)、独ボッシュなど系列の枠を超え複数の自動車会社と取引する巨大部品会社が台頭する。

一連の環境変化を受け、スイスのビジネススクールIMDが5月に公表した自動車各社の「未来への備え」番付で、昨年2位のトヨタが今年は10位に下がった。ランキングに一喜一憂する必要はないが、常に上位だったトヨタの下落を警鐘と受け止めたい。

次世代の全固体電池の開発はじめ日本勢の優位はまだまだ多い。自らの強みと他からの学びを相乗して、輝きを維持してほしい。

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