米国、南シナ海で対中国包囲網拡大 韓国・インドと連携

バイデン氏(右)は南シナ海をめぐり日韓と協力を深める立場を強調した(18日、キャンプデービッド)【ワシントン=中村亮】バイデン米政権が南シナ海の実効支配を進める中国に対して包囲網を広げている。中国の主張を否定した2016年の国際判決について韓国やインドの支持を取り付けた。中国と海洋権益を争うフィリピンを多国間で支える体制を整える。「我々は南シナ海における国際法や航行の自由、紛争の平和的解決を支持する」。バイデン米大統領は18日、首都ワシントン近郊の山荘「キャンプデービッド」で開いた日韓首脳との会談後の記者会見で力説した。会談後に公表した「キャンプデービッドの精神」は、国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所が16年に下した南シナ海をめぐる判決に触れた。「当事者間における海洋問題の平和的解決に向けた法的土台になる」と盛り、判決を支持した。判決は中国が南シナ海のほぼ全域に管轄権を持つと主張する際に使う「九段線」の法的根拠を否定。中国とフィリピンが海洋権益を争う南シナ海のアユンギン礁をめぐり、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)に含まれると判断した。米戦略国際問題研究所(CSIS)のグレゴリー・ポーリング上級研究員によると、韓国が同判決への支持を公言するのは初めて。日米韓首脳会談は協力分野を北朝鮮から中国に広げる狙いがあり、具体策の一つとなった。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は記者会見で「力による一方的な現状変更に反対し、主権の尊重、領土の保全、紛争の平和的解決のような規範に基づく国際秩序を守るため協力を一層強化していく」と話した。その一環として日米と連携し、東南アジア諸国などの海洋安全保障の能力強化を支援すると説明した。インドも6月末、16年の判決に支持を表明した。インド・フィリピン外相会談後に発表した共同声明に明記した。インドは「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の代表格。国際社会で発言力が増し、支持は対中包囲網が強くなることを意味する。直前にインドのモディ首相は米ホワイトハウスを訪問し、バイデン大統領と会談した。南シナ海をあげて「ルールに基づく海洋秩序への挑戦」に対処する方針を確認した。近東・南アジア戦略研究センターのジェフリー・ペイン氏はインドが東南アジアや太平洋島しょ国への関与を強めていると指摘。「南シナ海をめぐり米国とインドの協力が進む

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米国、南シナ海で対中国包囲網拡大 韓国・インドと連携

【ワシントン=中村亮】バイデン米政権が南シナ海の実効支配を進める中国に対して包囲網を広げている。中国の主張を否定した2016年の国際判決について韓国やインドの支持を取り付けた。中国と海洋権益を争うフィリピンを多国間で支える体制を整える。

「我々は南シナ海における国際法や航行の自由、紛争の平和的解決を支持する」。バイデン米大統領は18日、首都ワシントン近郊の山荘「キャンプデービッド」で開いた日韓首脳との会談後の記者会見で力説した。

会談後に公表した「キャンプデービッドの精神」は、国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所が16年に下した南シナ海をめぐる判決に触れた。「当事者間における海洋問題の平和的解決に向けた法的土台になる」と盛り、判決を支持した。

判決は中国が南シナ海のほぼ全域に管轄権を持つと主張する際に使う「九段線」の法的根拠を否定。中国とフィリピンが海洋権益を争う南シナ海のアユンギン礁をめぐり、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)に含まれると判断した。

米戦略国際問題研究所(CSIS)のグレゴリー・ポーリング上級研究員によると、韓国が同判決への支持を公言するのは初めて。日米韓首脳会談は協力分野を北朝鮮から中国に広げる狙いがあり、具体策の一つとなった。

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は記者会見で「力による一方的な現状変更に反対し、主権の尊重、領土の保全、紛争の平和的解決のような規範に基づく国際秩序を守るため協力を一層強化していく」と話した。

その一環として日米と連携し、東南アジア諸国などの海洋安全保障の能力強化を支援すると説明した。

インドも6月末、16年の判決に支持を表明した。インド・フィリピン外相会談後に発表した共同声明に明記した。インドは「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の代表格。国際社会で発言力が増し、支持は対中包囲網が強くなることを意味する。

直前にインドのモディ首相は米ホワイトハウスを訪問し、バイデン大統領と会談した。南シナ海をあげて「ルールに基づく海洋秩序への挑戦」に対処する方針を確認した。

近東・南アジア戦略研究センターのジェフリー・ペイン氏はインドが東南アジアや太平洋島しょ国への関与を強めていると指摘。「南シナ海をめぐり米国とインドの協力が進む流れだ」と分析する。

米国は外交圧力をテコに中国の海洋進出を抑える考えだ。米国は南シナ海で航行の自由作戦を繰り返したり、中国企業に経済制裁を科したりして中国の実効支配に対抗してきたが、打つ手が乏しくなっている。

バイデン政権が対中国包囲網づくりを急ぐのは、フィリピンと関係を強める狙いもある。フィリピンのマルコス大統領は南シナ海の海洋権益を譲らない方針を示しており、米国はフィリピンを多国間で支える体制を整えている。

フィリピン国軍によると、中国海警局の船は8月上旬に南シナ海のアユンギン礁周辺で放水銃を使ってフィリピン船の航行を妨害した。2月にも中国船が同礁周辺でフィリピンの巡視船にレーザー照射をした。

放水銃の使用が発覚すると、オースティン米国防長官はすぐにフィリピンのテオドロ国防相と電話し、中国を非難した。南シナ海でのフィリピン公船に対する攻撃は米比相互防衛条約の適用対象になると確認し、中国の抑止を狙った。

ポーリング氏はアユンギン礁周辺で妨害行為が定期的に起きているとして、中国人民解放軍高官の指示に基づく意図的な作戦だと指摘した。妨害行為が続けば意図しない軍事衝突に発展するリスクがあると警鐘を鳴らす。

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