[経済] 「EVの普及加速、蓄えた知見生かし商機に」「必要に応じてM&Aも」…デンソー・林新之助社長

デンソーの林新之助社長(愛知県刈谷市で)=青木瞭撮影 6月に就任したデンソーの林新之助社長が、読売新聞などのインタビューに答えた。クルマの電動化や自動運転といった次世代技術「CASE」の進展で、自動車部品メーカーも事業構造の転換を迫られている。国内最大手のトップに戦略を聞いた。 「若年層は資産形成商品にニーズ、シニア世代以外の取り込み目指す」…第一生命保険・隅野俊亮社長 次の5年、10年に向けギアシフト ――社長としての抱負を 「自動車業界が大きな変化の中にいる。変化に追随するのではなく、対応する、あるいは先取りして動く必要がある。デンソーは、安心、環境という取り組みを通じて、笑顔あふれる未来を届けるということで経営してきた。しっかり継承しながら、変化の中を力強く生き抜いていきたい。 コロナや半導体不足、ウクライナ問題など、経営的にはネガティブな状態が2、3年続いた。基盤はしっかり整ったので、次の5年、10年に向けて、ギアシフトをしっかりしていきたい」 ――電気自動車(EV)の普及状況をどうみるか。 「当初の予想より加速しているのは間違いない。現在、グローバルでEVの比率は10%くらいだと思うが、30年には30%を超えてくる。欧米や中国に限れば50%近くまで高まるだろう。 電動車の知見はハイブリッド車(HV)向け部品で四半世紀かけて蓄えており、既にEV向けの製品から要素技術までひと通りの基盤をそろえている。商機と捉えて各自動車メーカーの需要をくみ取り、先んじてソリューションを提案していく。(EVで不要になる)内燃機関系の事業は整理していく。 特に変化の速い中国では、現地での生産・開発体制を強化する。中国のスピード感に対応できる企業との連携も戦略的に行う。必要に応じてM&Aも検討したい」IT系エンジニアの採用強化 ――自動運転などが進み、車載ソフトウェアの重要性が高まっている。 「クルマに搭載する部品には安全性が不可欠だ。パワートレイン(駆動装置)の電子制御など、クルマの機能安全を担保するためのソフトウェアの知見を持っていることは強みになる。IT系のエンジニアの採用も強化する。 一方で、車載ソフトウェアを活用してどんなクルマをつくると利用者にメリットがあり、収益を上げられるのかは現状では見通しづらい部分もある。自動車メーカーと

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[経済] 「EVの普及加速、蓄えた知見生かし商機に」「必要に応じてM&Aも」…デンソー・林新之助社長
デンソーの林新之助社長(愛知県刈谷市で)=青木瞭撮影
デンソーの林新之助社長(愛知県刈谷市で)=青木瞭撮影

 6月に就任したデンソーの林新之助社長が、読売新聞などのインタビューに答えた。クルマの電動化や自動運転といった次世代技術「CASE」の進展で、自動車部品メーカーも事業構造の転換を迫られている。国内最大手のトップに戦略を聞いた。

「若年層は資産形成商品にニーズ、シニア世代以外の取り込み目指す」…第一生命保険・隅野俊亮社長

次の5年、10年に向けギアシフト

 ――社長としての抱負を

 「自動車業界が大きな変化の中にいる。変化に追随するのではなく、対応する、あるいは先取りして動く必要がある。デンソーは、安心、環境という取り組みを通じて、笑顔あふれる未来を届けるということで経営してきた。しっかり継承しながら、変化の中を力強く生き抜いていきたい。

 コロナや半導体不足、ウクライナ問題など、経営的にはネガティブな状態が2、3年続いた。基盤はしっかり整ったので、次の5年、10年に向けて、ギアシフトをしっかりしていきたい」

 ――電気自動車(EV)の普及状況をどうみるか。

 「当初の予想より加速しているのは間違いない。現在、グローバルでEVの比率は10%くらいだと思うが、30年には30%を超えてくる。欧米や中国に限れば50%近くまで高まるだろう。

 電動車の知見はハイブリッド車(HV)向け部品で四半世紀かけて蓄えており、既にEV向けの製品から要素技術までひと通りの基盤をそろえている。商機と捉えて各自動車メーカーの需要をくみ取り、先んじてソリューションを提案していく。(EVで不要になる)内燃機関系の事業は整理していく。

 特に変化の速い中国では、現地での生産・開発体制を強化する。中国のスピード感に対応できる企業との連携も戦略的に行う。必要に応じてM&Aも検討したい」

IT系エンジニアの採用強化

 ――自動運転などが進み、車載ソフトウェアの重要性が高まっている。

 「クルマに搭載する部品には安全性が不可欠だ。パワートレイン(駆動装置)の電子制御など、クルマの機能安全を担保するためのソフトウェアの知見を持っていることは強みになる。IT系のエンジニアの採用も強化する。

 一方で、車載ソフトウェアを活用してどんなクルマをつくると利用者にメリットがあり、収益を上げられるのかは現状では見通しづらい部分もある。自動車メーカーと相談しながら探っていく必要がある」

 ――コロナ禍で車載半導体の不足が問題になった。

 「50年以上にわたって車載半導体の生産を手がけており、市場でも一定の地位を築いている。外販を増やし、供給責任を果たしていきたい。

 自動車業界と半導体業界の両方と取引がある立場を生かし、商慣習のギャップを埋めることにも取り組む。例えば(自動車業界が)需要をできるだけ早く意思表明すれば、(半導体メーカーは)生産強化の見通しがたてられる。半導体の標準化も進める」

  ◆林新之助氏(はやし・しんのすけ)  1986年早大理工卒、日本電装(現デンソー)入社。ソフトウェアの開発経験が長く、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置「コモンレール」の電子制御システムなどに携わった。常務役員や経営役員を経て、2023年6月から社長。趣味は読書とウォーキング。三重県出身。

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