金融庁・栗田新体制が発足 資産運用業の改革課題

4日に金融庁長官に就任した栗田照久氏金融庁の2023事務年度(23年7月〜24年6月)の新体制が4日、発足した。中島淳一前長官の後を担うのは、総合政策局長から昇格した栗田照久長官だ。金融機関の監督やモニタリングの経験が長い栗田氏のもとで、国際的な金融規制や資産運用業の高度化に取り組む。秋の臨時国会での成立を目指す金融商品取引法改正案などの行方も焦点になる。栗田氏は監督局長を歴代最長となる4年間務め、総合政策局長としてフィンテック企業の監視や育成に注力した。金融リスクを点検し危機を未然に防ぐ対応力に定評がある。22年に暗号資産(仮想通貨)交換業大手FTXトレーディングが経営破綻した際には、日本法人に対していち早く資産保全命令を出して利用者保護につなげた。栗田新体制が重点的に取り組む課題は3つある。まずはSNS(交流サイト)が金融システムに及ぼしうるリスクの検証や対策の策定だ。米シリコンバレーバンク(SVB)はSNSで流れた信用不安説がきっかけになり預金が流出した。こうした事態に備える国際金融制度の見直しは、5月の主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でも主要テーマになった。有泉秀金融国際審議官や油布志行総合政策局長とともに、新しい金融リスクへの対応について議論を深めていく。2つ目は「貯蓄から投資」の加速だ。2024年1月に新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まる。個人の金融リテラシーを底上げする司令塔として期待されるのが金融経済教育推進機構だ。さきの国会では機構の立ち上げに必要な金商法改正案など2法案が成立しなかった。企画市場局長に留任した井藤英樹氏のもとで秋の臨時国会での成立をめざす。岸田文雄政権の掲げる資産運用業等の高度化が課題の3つ目になる。資産運用改革に取り組んできた堀本善雄政策立案総括官は留任した。新年度も堀本氏が旗振り役になる。金融庁内の組織変更で企画市場局のなかに資産運用改革室長のポストが設けられた。これまで改革案を練ってきた総合政策局とともに総力戦で取り組む。資産運用業等の高度化は運用会社に資金を投じる年金などアセットオーナーの改革も促している。金融庁がまとめたリポートは小粒な企業年金が乱立する現状を問題視した。所管する厚生労働省と連携して、年金の運用効率を上げるような政策を検討する。春先に米欧の金融市場が混乱した後も不透明な環境は続く。一見す

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金融庁・栗田新体制が発足 資産運用業の改革課題

金融庁の2023事務年度(23年7月〜24年6月)の新体制が4日、発足した。中島淳一前長官の後を担うのは、総合政策局長から昇格した栗田照久長官だ。金融機関の監督やモニタリングの経験が長い栗田氏のもとで、国際的な金融規制や資産運用業の高度化に取り組む。秋の臨時国会での成立を目指す金融商品取引法改正案などの行方も焦点になる。

栗田氏は監督局長を歴代最長となる4年間務め、総合政策局長としてフィンテック企業の監視や育成に注力した。金融リスクを点検し危機を未然に防ぐ対応力に定評がある。22年に暗号資産(仮想通貨)交換業大手FTXトレーディングが経営破綻した際には、日本法人に対していち早く資産保全命令を出して利用者保護につなげた。

栗田新体制が重点的に取り組む課題は3つある。まずはSNS(交流サイト)が金融システムに及ぼしうるリスクの検証や対策の策定だ。米シリコンバレーバンク(SVB)はSNSで流れた信用不安説がきっかけになり預金が流出した。こうした事態に備える国際金融制度の見直しは、5月の主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でも主要テーマになった。有泉秀金融国際審議官や油布志行総合政策局長とともに、新しい金融リスクへの対応について議論を深めていく。

2つ目は「貯蓄から投資」の加速だ。2024年1月に新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まる。個人の金融リテラシーを底上げする司令塔として期待されるのが金融経済教育推進機構だ。さきの国会では機構の立ち上げに必要な金商法改正案など2法案が成立しなかった。企画市場局長に留任した井藤英樹氏のもとで秋の臨時国会での成立をめざす。

岸田文雄政権の掲げる資産運用業等の高度化が課題の3つ目になる。資産運用改革に取り組んできた堀本善雄政策立案総括官は留任した。新年度も堀本氏が旗振り役になる。金融庁内の組織変更で企画市場局のなかに資産運用改革室長のポストが設けられた。これまで改革案を練ってきた総合政策局とともに総力戦で取り組む。

資産運用業等の高度化は運用会社に資金を投じる年金などアセットオーナーの改革も促している。金融庁がまとめたリポートは小粒な企業年金が乱立する現状を問題視した。所管する厚生労働省と連携して、年金の運用効率を上げるような政策を検討する。

春先に米欧の金融市場が混乱した後も不透明な環境は続く。一見すると国内は小康状態のようだが、地域金融機関の経営が厳しさを増すなどリスクの芽は出てきている。金融システムの安定維持は栗田新体制の手腕にかかる。(湯浅兼輔)

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