[音楽] オノフリ指揮のハイドン・フィル…斬新でパワフル、遊び心も
撮影・林喜代種 オーストリアの室内楽団、ハイドン・フィルハーモニー管弦楽団は、作曲家ハイドンゆかりのアイゼンシュタットを拠点として、1987年に設立。今回の来日公演は、アーティスティック・パートナーのエンリコ・オノフリが指揮を執った。 東京芸術劇場新オルガニストに夫婦で就任…世界唯一の音色で多彩な挑戦 バロック・ヴァイオリン奏者として、よく知られた作品を斬新な姿へ 変貌(へんぼう) させてきたオノフリは、この夜も圧倒的な存在感で全身をフル稼働させ、とにかく楽団を 煽(あお) りに煽る。多少の傷や濁りもなんのその、随所で独特の解釈を打ち出してくる。 ハイドンの弟・ミヒャエルの交響曲第39番は珍しい曲目であるが、耳をつんざくパワフルな総奏、主要なフレーズの切れ目に現れる急ブレーキなどで味付けられ、この曲に親しんでいると自負してきた評者もまさに目から 鱗(うろこ) であった。 兄・ヨーゼフの交響曲第96番「奇跡」でも、指揮者の姿勢は全く変わらない。メヌエット楽章では強弱を自在に操作するだけでなく、トリオでオーボエ奏者が半ば即興的に装飾や変奏を加えるなどの遊びが聴き手を 惹(ひ) きつけてやまない。 ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」ではさらに新規(新奇?)な表現がまさにてんこ盛り。「運命」の動機の積み重ねとともにテンポを上げていく箇所などは、さながら荒れ狂う波に 揉(も) まれながら進む小舟に乗った気分。 楽器間のバランスを冷静に制御することがもう少しあったら、と思う場面もなくはなかったが、最終楽章が持つ過剰なまでのエネルギーは、この指揮者、この楽団でなければ、ここまで大きくならなかっただろう。これからも目を離せないコンビである。(音楽評論家・安田和信) ――6月27日、築地・浜離宮朝日ホール。
オーストリアの室内楽団、ハイドン・フィルハーモニー管弦楽団は、作曲家ハイドンゆかりのアイゼンシュタットを拠点として、1987年に設立。今回の来日公演は、アーティスティック・パートナーのエンリコ・オノフリが指揮を執った。
バロック・ヴァイオリン奏者として、よく知られた作品を斬新な姿へ
ハイドンの弟・ミヒャエルの交響曲第39番は珍しい曲目であるが、耳をつんざくパワフルな総奏、主要なフレーズの切れ目に現れる急ブレーキなどで味付けられ、この曲に親しんでいると自負してきた評者もまさに目から
兄・ヨーゼフの交響曲第96番「奇跡」でも、指揮者の姿勢は全く変わらない。メヌエット楽章では強弱を自在に操作するだけでなく、トリオでオーボエ奏者が半ば即興的に装飾や変奏を加えるなどの遊びが聴き手を
ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」ではさらに新規(新奇?)な表現がまさにてんこ盛り。「運命」の動機の積み重ねとともにテンポを上げていく箇所などは、さながら荒れ狂う波に
楽器間のバランスを冷静に制御することがもう少しあったら、と思う場面もなくはなかったが、最終楽章が持つ過剰なまでのエネルギーは、この指揮者、この楽団でなければ、ここまで大きくならなかっただろう。これからも目を離せないコンビである。(音楽評論家・安田和信)
――6月27日、築地・浜離宮朝日ホール。
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