「あと10分で」焦らせ契約 ダークパターン、9割が経験

消費者庁はホームページなどで「ダークパターン」への注意を促すウェブサイトやアプリの表記・デザインで購入をあおるなどして、気づかぬうちに不利な決定へ誘導する「ダークパターン」が横行している。消費者庁の初調査では9割の消費者が経験。国は一部で規制を進めるが、欧米と比べて動きは鈍い。ネット通販が生活に欠かせない存在となる中、トラブルを防ぐ枠組みが必要となる。「受け付け終了まであと10分です」。ネット通販で美容液を探していた関東地方の50代女性はセールの終了時間を知らせる表示を見かけた。内容をよく確かめずに注文ボタンを押してしまう。1つだけ買うつもりが後日、2つ目の商品と請求書が届いた。実際は一定のサイクルで商品が届く「定期購入」だった。こうした手法は消費者を欺き、強要し、あるいは操るなどして不利益な選択に導く「ダークパターン」と呼ばれる。近年、全国の消費生活センターに相談が相次ぐ。消費者庁は実態を把握しようと、2022年度の「消費者意識基本調査」でダークパターンについて初めて尋ねた。6月にまとめた調査結果によると、ネットでの予約や購入の際に見かけたり、経験したりしたことがある人は89.2%に上った。項目別では「『残りわずか』など売り切れ間近のような表示」が78.7%で最も多かった。「○人が閲覧中」「○人が購入済み」といった「他人の動向表示」(72.0%)、「特典の有効期限をカウントダウンで表示するタイマー」(61.7%)が続いた。東京工業大の研究チームは4月、日本向けの通販やゲーム、音楽などの主なアプリ200個についての調査結果を発表。ダークパターンは93.5%で使われ、平均3.9の手法が確認されたとした。事例としては▽アプリ内の操作で解約できない▽注文確定の直前になって事前に示されていない料金が加わる――などがみられたという。ネット通販の普及とともにトラブルは増えている。ダークパターンも含め、消費生活センターに寄せられたネット通販関連の相談は22年度に27万3759件。5年前から約20%増えた。担当者は「新型コロナウイルス禍を機に幅広い年代が使うようになった。不慣れな人も多く、被害に遭いやすくなっている」と話す。海外は規制で先行する。欧州連合(EU)は22年に発効したデジタルサービス法で消費者を欺いたり、操ったりするサイトの設計自体を禁止する。米国は連邦取引委員会法(F

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「あと10分で」焦らせ契約 ダークパターン、9割が経験

ウェブサイトやアプリの表記・デザインで購入をあおるなどして、気づかぬうちに不利な決定へ誘導する「ダークパターン」が横行している。消費者庁の初調査では9割の消費者が経験。国は一部で規制を進めるが、欧米と比べて動きは鈍い。ネット通販が生活に欠かせない存在となる中、トラブルを防ぐ枠組みが必要となる。

「受け付け終了まであと10分です」。ネット通販で美容液を探していた関東地方の50代女性はセールの終了時間を知らせる表示を見かけた。

内容をよく確かめずに注文ボタンを押してしまう。1つだけ買うつもりが後日、2つ目の商品と請求書が届いた。実際は一定のサイクルで商品が届く「定期購入」だった。

こうした手法は消費者を欺き、強要し、あるいは操るなどして不利益な選択に導く「ダークパターン」と呼ばれる。近年、全国の消費生活センターに相談が相次ぐ。

消費者庁は実態を把握しようと、2022年度の「消費者意識基本調査」でダークパターンについて初めて尋ねた。6月にまとめた調査結果によると、ネットでの予約や購入の際に見かけたり、経験したりしたことがある人は89.2%に上った。

項目別では「『残りわずか』など売り切れ間近のような表示」が78.7%で最も多かった。「○人が閲覧中」「○人が購入済み」といった「他人の動向表示」(72.0%)、「特典の有効期限をカウントダウンで表示するタイマー」(61.7%)が続いた。

東京工業大の研究チームは4月、日本向けの通販やゲーム、音楽などの主なアプリ200個についての調査結果を発表。ダークパターンは93.5%で使われ、平均3.9の手法が確認されたとした。事例としては▽アプリ内の操作で解約できない▽注文確定の直前になって事前に示されていない料金が加わる――などがみられたという。

ネット通販の普及とともにトラブルは増えている。ダークパターンも含め、消費生活センターに寄せられたネット通販関連の相談は22年度に27万3759件。5年前から約20%増えた。担当者は「新型コロナウイルス禍を機に幅広い年代が使うようになった。不慣れな人も多く、被害に遭いやすくなっている」と話す。

海外は規制で先行する。欧州連合(EU)は22年に発効したデジタルサービス法で消費者を欺いたり、操ったりするサイトの設計自体を禁止する。米国は連邦取引委員会法(FTC法)で「不公正または欺瞞(ぎまん)的な行為・慣行」を幅広く禁じる。

日本でも22年6月施行の改正特定商取引法で定期購入をめぐる対策が強化された。事業者側に契約内容の明確な記載を求め、消費者が紛らわしい表示を見て申し込んだ場合は取り消せるようになった。

ただ、EUのようなダークパターンの包括的な規制はない。消費者法に詳しい染谷隆明弁護士は「ダークパターンは手法が多岐にわたり、現状では全ての手法を取り締まるのは難しい」と指摘。消費者の選択がゆがめられる状態を放置せずに「どのような規制のあり方が望ましいのか、議論を進める必要がある」と話す。(前田健輔)

▼ダークパターン 一般的に消費者を不利な判断や意思決定に誘導する仕組みのウェブデザインなどを指す。英国で警告サイトを運営するハリー・ブリグナル氏が名付け、2010年ごろから徐々に認知された。
経済協力開発機構(OECD)はカウントダウンタイマーなどで焦らせて購入に踏み切らせる「緊急」や、解約などを妨げる「妨害」といった7つに手法を分類。22年にまとめた報告書で「消費者を欺き、操作し、被害を引き起こす可能性がある」とした。米欧では利用者の同意取得やサブスクリプション(定額課金)サービス登録などを巡る訴訟が相次いでいる。

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