北海道の景況感、全産業5期連続改善 5類移行で人流回復

日銀札幌支店が3日発表した北海道における6月の企業短期経済観測調査（短観）によると、企業の業況判断指数（DI、全産業）はプラス8と、前回調査から1ポイント改善した。改善は5期連続。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に移行したことで人流が回復。観光やサービス業を中心に業況改善が目立つ。

業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いて算出する。北海道の製造業104社と非製造業333社の計437社から、5月29日〜6月30日に回答を得た。回答率は99.8%だった。

非製造業はプラス13で前回から2ポイント改善。製造業はマイナス9と3ポイント低下した。

非製造業のうち、宿泊・飲食サービスは18ポイント高いプラス50だった。対個人サービスはプラス31と24ポイント上昇した。観光庁の調査によると、北海道の4月の延べ宿泊者数が前年同月比32%増の約228万人泊だった。うち日本人延べ宿泊者数はおよそ197万人泊。増加率は15%と全国（12%）を上回った。

製造業は2期連続で悪化した。木材・木製品はマイナス45と54ポイント下げた。地価や建設コストの上昇で、新設住宅が振るわない。北海道建設部の統計によると、4月の新設住宅着工戸数は計3099戸と前年同月比4%減。うち分譲住宅は同48%減の440戸だった。電気機械はマイナス57と28ポイント下げた。

23年度上期の売上高（計画）は前年同期比5%増を見込む。経常利益は同19%減を予想する。物価高を背景に販売価格上昇で売上高は伸びているが、十分な利益確保に至る水準までは転嫁し切れていない。

先行きについて23年度下期の経常利益は同13%増を計画する。道銀地域総合研究所（札幌市）の小野公嗣主任研究員は「改善傾向だが、23年度上半期の減益分を埋め合わせるような最低限の増益効果にとどまるのではないか」とみる。

23年9月の先行き業況判断DIは全産業でプラス6と、今回調査から2ポイント低下する。日銀札幌支店の岡本宜樹支店長は「道内企業は仕入れ価格上昇を販売価格に転嫁するのに苦労している。需要が期待できる間に円滑に（転嫁を）進めていくことが設備投資や人材確保のための賃上げ原資確保に重要だ」と述べた。

日銀札幌支店は同日発表した6月の金融経済概況で、北海道の景気判断を「緩やかに持ち直している」として前回（23年5月）から据え置いた。据え置きは13カ月連続となる。日銀函館支店は北海道南部の景気について「持ち直している」として判断を引き上げた。日銀旭川事務所は北海道北部の景気について「緩やかに持ち直している」として12カ月連続で判断を据え置いた。

（神野恭輔）