「団結は戦争を防ぐ」 ゼレンスキー大統領の演説全文

演説を終えたゼレンスキー氏=ロイターウクライナのゼレンスキー大統領は東海岸時間19日午後2時ごろ(日本時間20日午前3時)、国連総会での演説に臨んだ。演説の全文は次の通り(録音と演説原稿に基づいて翻訳)。私はここで共通の目標に向かって取り組む皆さんを歓迎する。そして、我々が本当の意味で団結することで、すべての国に平和をもたらすことができると約束する。 団結は、戦争を防ぐことができるのだ。紳士淑女のみなさん、事務総長、議長、親愛なる指導者の皆さん、この総会ホール(会場)は多くの戦争についての話し合いの場になってきた。だが、侵略者をとどめることに対し、それほど積極的な役割を果たしてこなかった。対面で演説するのはロシアのウクライナ侵攻以降で初めて=AP多くの場合、私たちは再び国連総会に誰も集まれなくなるような最終戦争、国家間の対立がまっしぐらに核兵器使用の脅威につながるような「世界大戦」を恐れてきた。第3次世界大戦は、核戦争になると考えられてきた。他の戦争は、大国と呼ばれる国々が核兵器を乱射する脅威に比べれば、それほど恐ろしくないと思われてきた。20世紀は、大量破壊兵器の使用を抑制し、配備せず、拡散させず、脅さず、実験しない、完全な核軍縮を推進することを世界に教えた。これは良い戦略だが、率直に言って、世界を最終戦争から守る唯一の戦略であってはならない。ウクライナは、世界で3番目に多く保有していた核兵器を放棄した。(国際社会は)ロシアが核を保持すべきだと結論を出した。しかし、歴史を振り返ってみると、1990年代にロシアこそが核軍縮の対象となるべきだった。 テロリストに核兵器を持つ権利はない。脅威は核だけではない。ロシアは核兵器をそのまま保有しており、大量破壊に向かう勢いは増しているが、他にも多くのものを兵器と化した。それらは我が国に対してだけでなく、あなた方に対しても使用されている。親愛なる指導者たちよ、兵器を制限する条約は多く存在するが、「兵器化」に対する真の制限はない。参加者と記念撮影する場面も=AP例えば食料の兵器化だ。本格的な戦争が始まって以来、黒海とアゾフ海のウクライナの港はロシアによって封鎖されてきた。ドナウ川沿いの港はミサイルやドローン攻撃の対象となっている。それは、占領地の一部の領土化を認めさせるため、世界市場での食料不足を兵器化しようとするロシアの明らかな

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「団結は戦争を防ぐ」 ゼレンスキー大統領の演説全文

ウクライナのゼレンスキー大統領は東海岸時間19日午後2時ごろ(日本時間20日午前3時)、国連総会での演説に臨んだ。演説の全文は次の通り(録音と演説原稿に基づいて翻訳)。

私はここで共通の目標に向かって取り組む皆さんを歓迎する。そして、我々が本当の意味で団結することで、すべての国に平和をもたらすことができると約束する。 団結は、戦争を防ぐことができるのだ。

紳士淑女のみなさん、事務総長、議長、親愛なる指導者の皆さん、この総会ホール(会場)は多くの戦争についての話し合いの場になってきた。だが、侵略者をとどめることに対し、それほど積極的な役割を果たしてこなかった。

多くの場合、私たちは再び国連総会に誰も集まれなくなるような最終戦争、国家間の対立がまっしぐらに核兵器使用の脅威につながるような「世界大戦」を恐れてきた。第3次世界大戦は、核戦争になると考えられてきた。

他の戦争は、大国と呼ばれる国々が核兵器を乱射する脅威に比べれば、それほど恐ろしくないと思われてきた。

20世紀は、大量破壊兵器の使用を抑制し、配備せず、拡散させず、脅さず、実験しない、完全な核軍縮を推進することを世界に教えた。これは良い戦略だが、率直に言って、世界を最終戦争から守る唯一の戦略であってはならない。

ウクライナは、世界で3番目に多く保有していた核兵器を放棄した。(国際社会は)ロシアが核を保持すべきだと結論を出した。しかし、歴史を振り返ってみると、1990年代にロシアこそが核軍縮の対象となるべきだった。 テロリストに核兵器を持つ権利はない。

脅威は核だけではない。ロシアは核兵器をそのまま保有しており、大量破壊に向かう勢いは増しているが、他にも多くのものを兵器と化した。それらは我が国に対してだけでなく、あなた方に対しても使用されている。親愛なる指導者たちよ、兵器を制限する条約は多く存在するが、「兵器化」に対する真の制限はない。

例えば食料の兵器化だ。本格的な戦争が始まって以来、黒海とアゾフ海のウクライナの港はロシアによって封鎖されてきた。ドナウ川沿いの港はミサイルやドローン攻撃の対象となっている。それは、占領地の一部の領土化を認めさせるため、世界市場での食料不足を兵器化しようとするロシアの明らかな試みだ。ロシアは食料の価格を武器に変えているのだ。アフリカの大西洋岸から東南アジアに至るまでの地域に影響を及ぼしている。

黒海における穀物協定を取り持ち、支援してくれた指導者たちに感謝したい。この支援により、武器となってしまったものを、再び食料へと戻すことができた。アルジェリアやスペイン、インドネシアから中国に至るまで、45カ国以上がウクライナ産の食べ物を市場に流通させることの大切さを知っていたのだ。

ロシアは穀物協定の合意から離脱した。私たちは食料の安定を確保するために努力しているし、これに皆が協力してくれることを期待している。

我々は、ウクライナの港から一時的な輸出回廊を立ち上げた。また、輸出のための陸路の確保に努めている。

欧州の一部で、政治的な舞台では我々との連帯を演じながら、実際にはモスクワの役者に舞台を用意する手助けをしている国がある。憂慮すべきことだ。

第2に、ロシアはエネルギーも兵器化している。ロシアがエネルギーを武器として使うのを、世界は何度も目撃してきた。クレムリンは、他国の指導者を弱体化させるために石油とガスを武器にした。

ロシアは原子力エネルギーを兵器化している。自国の当てにならない原子力発電所の建築技術をあちこちにばらまいているだけではなく、他国の原子力発電所を汚らしい爆弾に仕立て上げている。ロシアが我々の(ザポロジエ)原発にやったことをみてほしい。爆弾で攻撃し、占領したうえで、放射能漏れを各国に脅しをかける材料に使っている。

ロシアが原子力発電所を攻撃の道具としている今、核兵器を削減しようという理性的な試みはないのだろうか。そら恐ろしい質問だ。世界の安全保障を守る枠組みは、このような陰険な放射能を使った脅しに対し、なんの対応もなければ、保護も与えてくれない。これまでのところ、放射能による恐喝者に、どのような説明責任も問うていない。

3番目の例は子どもたちだ。不幸なことに、これまでもテロリスト集団が社会や家族に圧力を加えるために、子供を利用する例はあった。だが、一国が政策として子供を集団で誘拐して連れ込むような取り組みはいままでなかった。ロシア占領下にあるウクライナの地域から連れ去られた子供は、名前が分かっているだけで何万人もいる。連れ去られた証拠があるが、身元の確認がとれない子供は何十万人もいる。

国際刑事裁判所(ICC)はプーチンに対し、この戦争犯罪の容疑により逮捕状を出した。我々は連れ去られた子どもたちを取り戻そうと努力しているが、時間が過ぎていく。どのようなことが起こるか。連れ去れた子どもたちはロシアにウクライナを憎むように教えられ、家族の絆は引き裂かれる。これは明らかにジェノサイドだ。(*注 ジェノサイドの定義には子供を強制的に他の集団に移動させることも含む)

憎しみが他国に武器として使われるとき、その攻撃が一国にとどまることはない。モルドバやジョージアは国土の一部を占領されたままだ。ロシアはシリアを焦土と化した。もしロシアが関わることがなかったら、シリアで化学兵器が使われることはなかっただろう。ロシアはベラルーシをほぼ完全にのみ込んだ。カザフスタンやバルト3国も明らかに脅されている。

ウクライナに対する戦争の目的は1つ。我々の国土や人々をあなた方や、ルールに基づく国際秩序を攻撃する武器に変えることだ。ロシアがこの陰険な攻撃に成功したあかつきには、国連総会に空席がいくつもできることになるだろう。

この侵略者は核兵器を使わなくても、同じように死と破壊をまき散らしている。ロシアの兵器によって壊滅した村や町がその証拠だ。ドローンによる戦争がある。サイバー空間に戦地を広げ、人工知能(AI)が人類を助けるすべを学ぶ前に(人類を)うまく攻撃することを学べば、どのような結果が起きうるかについて知っている。

せめてもの救いは、まだ人類は気候を武器として使う方法を身につけていないことだ。人類は気候変動に関する目標を達成できておらず、異常気象が世界中の人々を苦しめている。悪意ある国がこの弱みにつけ込む可能性は大いにある。

ニューヨークやその他の都市の有志が気候変動への抗議行動を重ねている。またモロッコやリビア、その他の国々で自然災害によって人々が命を落としている。島や国が水面下で消滅している。竜巻や砂漠が新たな領域に広がっている。これらすべてが起こっているあいだ、モスクワは、人為的な災害を引き起こすことを決め、何万人もの人々を殺し始めた。

我々はそれを阻止しなければならない。侵略者を打ち負かすために一致団結して行動することで、いち早く気候変動などグローバルな課題への対処に集中できるようにしなければならない。核兵器が抑制されるように、侵略者も抑制されなければならない。今、いかなる戦争も核の脅威をはらんでいる。しかし、我々が団結し、そうした攻撃が二度と起こらないようにしなくてはいけない。

閉ざされたドアの中で行われる一握りの大国間の対話では平和は訪れない。平和を求めるすべての国が手を取り合う必要がある。

昨年、私は国連総会でウクライナの「平和の公式」を提議し、その後、インドネシアでその全体像を発表した。これは過去1年間で、既存の安全保障の枠組みをアップデートするうえでの基盤となった。国連憲章を復活させ、ルールに基づく世界秩序が尊重できる環境が整った。明日、国連安全保障理事会の特別会合で詳細を開示する。

重要なのは、これがウクライナだけに関わる話ではないということだ。140以上の国家や国際機関が、ウクライナの平和の公式を全面的あるいは部分的に支持している。この公式は世界的なものになりつつある。ロシアがウクライナや他の国々に対して使用し、他の侵略者にも使用される可能性があるような、あらゆる攻撃に対応策を提示するからだ。

近代史上で初めて、攻撃を受けた国が定めたやり方で、侵略を終わらせる機会が目の前にある。そしてウクライナという前例を確立することは、すべての国にとって、万が一自国に対する侵略が起こったとしても、その侵略は必ず止められるということを確かにすることに他ならない。国土が分割され、軍事的、または政治的圧力に従わざるを得なくなることなく、自国の領土と主権を完全に回復して争いに幕を閉じるという前例になりうる。

国家安全保障顧問と外交官との会談を開始した。広島とコペンハーゲン、そして(サウジアラビアの)ジッダでは、平和の公式の実用化に関する重要な協議が行われた。平和サミットの準備も進められている。このサミットは、平和を掲げ、侵略に反対する全ての国家と築きあげたい。

(ウクライナの敵国間で)水面下で不審な取引が試みられていることは承知している。悪への手出しをものともしない主導者は信頼してはいけない。プリゴジンの境遇を見れば、プーチンの約束に命を委ねるとどうなるかが分かる。

ロシアは世界を破滅に追い込んでいる。一方、ウクライナは、ロシアの侵略の後、世界でこのようなことが二度と起こらないよう、できる限りの力を尽くしている。

食料やエネルギーの兵器化を止めなければならない。戦争犯罪は罰せられなければいけない。連れ去られた人々は母国に帰り、占領者は本国に戻るべきだ。実現するためには、全世界が団結しなければならない。ウクライナに栄光あれ!

(ニューヨーク=弓真名、西邨紘子、野一色遥花)

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