[社会] 「ミスター富士山」８０歳で登頂２２３０回達成…「最高の気分だ」

　富士山の夏季登山が閉山日を迎えた１０日、「ミスター富士山」として知られる静岡県沼津市在住の登山家、実川 欣伸（よしのぶ） さん（８０）が ２２３（フジサン） ０回目の記念登頂に成功した。実川さんは「大勢の声援を受けたからこそ達成できた。最高の気分だ」と喜びを爆発させた。 記念登頂を成功させて仲間に祝福される実川さん（１０日、富士山山頂で）＝三沢大樹撮影　実川さんは、１９８５年８月に家族で登頂して以来、ノートに写真やメモで丹念に記録を書き留めてきた。繰り返し登るようになったのは、勤務先の中国人研修生を案内するようになってから。１０００回目を２０１０年１０月に、２０００回目を１８年６月に達成した。 　新型コロナウイルスの影響で２０年は史上初の夏山閉鎖となり、記録は足踏みしたが、今年は富士山が世界文化遺産登録１０周年を迎える節目で、語呂合わせの２２３０回を山の日（８月１１日）に達成させることを目標としてきた。記念登頂を成功させた実川さん（右）と妻の美樹さん＝１０日、富士山山頂で　寄る年波には勝てず、近年は体の痛みや疲労、ストレスなどと闘いながら登山を重ねてきた。今年に入って白内障の手術を受けたことなどで、山の日までの記念登頂はかなわなかったが、不屈の闘志で２２３０回目の登頂を果たした。　この日は、午前４時頃に裾野市の須山口登山口から登山仲間らとともにスタート。富士宮ルート６合目で、妻の美樹さん（５６）らが加わって、さらに大きな応援を受けた。道中は険しい表情で、頂上に向けてゆっくり歩みを進めていたが、「ミスター富士山だ！」と登山客から声をかけられ記念撮影を求められると、満面の笑みで応じていた。 　午後２時頃、ついに山頂に到達すると、２０人以上の仲間たちから祝福を受け、胴上げされた。道中は、約１０年前に伝説の 強力（ごうりき） （登山者の荷物を運び道案内する人）・梶房吉（１９００～６７年）の持つ記録（１６７２回）を破った記念登山などを回想した。 　実川さんは「昔のように思うように登れないが、これからも地道に登山を続けていきたい」と話した。来年はエベレストの登頂を狙う。