長崎の教会群、悩む観光誘客 世界遺産5年で関心低下も

世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本)を形づくる教会や集落などの約半数で登録前より観光客が減り、関係者が誘致に苦労している。新型コロナウイルス禍による落ち込みに加え、登録から今夏で5年が経過し、アピール効果が薄れつつある。魅力を高めるため、てこ入れを図る動きもある。展示の説明をする「久賀島潜伏キリシタン資料館」管理人の脇村富美子さん(8月、長崎県五島市)=共同「コロナ以降、ツアー客が途絶えた」。8月中旬、長崎市の西約100キロの洋上に位置する長崎県五島市の久賀島で「久賀島潜伏キリシタン資料館」の管理人を務める脇村富美子さん(69)がため息をついた。久賀島の旧五輪教会堂内部(8月、長崎県五島市)=共同館内には先祖が使った信仰具などが所狭しと並ぶ。島に移住した信徒がひそかに信仰を守った歴史を持ち、旧五輪教会堂などが遺産の一部となっている。曽祖母が潜伏キリシタンの脇村さんは、先祖の苦難の歴史を伝えようと、2018年12月に資料館を開館した。当初は月に複数のツアー客を受け入れるなど順調だったが、直近は1日に1人か2人まで落ち込んだ。キリシタン遺産は久賀島の集落を含む12資産で構成。このうち、無人島で普段立ち入れない「中江ノ島」を除く11資産の合計観光客数は登録された18年7月からの1年間では前年同期の1.5倍、約94万人を記録した。ところが、新型コロナの流行で20年7月〜21年6月は約30万人に急減。今年6月までの1年間も約61万人にとどまった。「外海の出津集落」と「黒島の集落」では登録前年に比べ、いずれも22%減となっている。潜伏キリシタンの儀式を再現する柿森和年さん㊧ら(8月、長崎県五島市)=禁教期のキリシタン研究会・桜美林大学提供・共同人口減や高齢化が進む離島などでは資産維持に携われる人材も乏しい。長崎県五島市・奈留島の柿森和年さん(77)は昨年開いた私設資料館を一人で運営しており「館内の整備からガイドまでこなすのは大変。ただ後継者のめどが立たない」とこぼす。対策として今年始めたのが、潜伏キリシタンが禁教期に行った儀式を再現し、映像作品に残す試みだ。末裔(まつえい)である自分がいなくなっても、記憶を十分引き継げるようにとの考えだ。「水方」と呼ばれた指導者が信者に洗礼を授ける様子を、自身ら信徒の末裔が演じて表現。桜美林大などの協力を得て本年

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長崎の教会群、悩む観光誘客 世界遺産5年で関心低下も

世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本)を形づくる教会や集落などの約半数で登録前より観光客が減り、関係者が誘致に苦労している。新型コロナウイルス禍による落ち込みに加え、登録から今夏で5年が経過し、アピール効果が薄れつつある。魅力を高めるため、てこ入れを図る動きもある。

「コロナ以降、ツアー客が途絶えた」。8月中旬、長崎市の西約100キロの洋上に位置する長崎県五島市の久賀島で「久賀島潜伏キリシタン資料館」の管理人を務める脇村富美子さん(69)がため息をついた。

館内には先祖が使った信仰具などが所狭しと並ぶ。島に移住した信徒がひそかに信仰を守った歴史を持ち、旧五輪教会堂などが遺産の一部となっている。

曽祖母が潜伏キリシタンの脇村さんは、先祖の苦難の歴史を伝えようと、2018年12月に資料館を開館した。当初は月に複数のツアー客を受け入れるなど順調だったが、直近は1日に1人か2人まで落ち込んだ。

キリシタン遺産は久賀島の集落を含む12資産で構成。このうち、無人島で普段立ち入れない「中江ノ島」を除く11資産の合計観光客数は登録された18年7月からの1年間では前年同期の1.5倍、約94万人を記録した。

ところが、新型コロナの流行で20年7月〜21年6月は約30万人に急減。今年6月までの1年間も約61万人にとどまった。「外海の出津集落」と「黒島の集落」では登録前年に比べ、いずれも22%減となっている。

人口減や高齢化が進む離島などでは資産維持に携われる人材も乏しい。長崎県五島市・奈留島の柿森和年さん(77)は昨年開いた私設資料館を一人で運営しており「館内の整備からガイドまでこなすのは大変。ただ後継者のめどが立たない」とこぼす。

対策として今年始めたのが、潜伏キリシタンが禁教期に行った儀式を再現し、映像作品に残す試みだ。末裔(まつえい)である自分がいなくなっても、記憶を十分引き継げるようにとの考えだ。

「水方」と呼ばれた指導者が信者に洗礼を授ける様子を、自身ら信徒の末裔が演じて表現。桜美林大などの協力を得て本年度中に完成させる。潜伏キリシタンが歩いた古道も巡礼路として整備する。

筑波大の松井圭介教授(観光地理学)は、ツアー会社やホテルに観光の収益が集中していることが問題と指摘し、「持続可能な形で遺産を継承していくには、地元住民に恩恵が行き渡る仕組みを整える必要がある」と訴えた。〔共同〕

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